「妻が働いていない」というのは
ひとつのライフスタイル

――配偶者控除の見直しについて反対する声のなかに、配偶者控除は低所得者にとってセーフティネットでもある、というものがあります。見直し案のように配偶者控除が変えられれば、年収65万円から所得税がかかることになってしまうと主張しています。

 実際は、低所得者が控除されている額はそんなに大きくないはずです。配偶者控除で得しているのは高所得者ですよ。

 そもそも、誰のための控除なのかということを考えなくてはいけないと思います。私は、「妻が働いていない世帯を助ける(税負担を軽減する)」というのは、変な気がします。病気などで働けなくて困窮している人を助けるのは社会として必要ですが、「妻が働いていない」というのはライフスタイルの一つであると思いますし、選択の問題です。あるひとつのライフスタイルをとっている世帯を助ける(税負担を軽減する)というのは、よく考えるとおかしいのではないかと思っています。

 確かに、検討されている案のように配偶者控除が見直されれば、低所得者にとっては手取りが減ります。でも、日本全体のことを考えた方が良いと思います。日本は2050年には、高齢者人口が4割に達する一方で、働く人は現在の3分の2。そんな状況で、この社会がもつのかどうか。そんな社会は、果たしてサスティナブルなのか。

 日本社会がそういう状況になっていくというのは分かっているし、確実に数十年後に訪れる未来なんです。人類史上、日本は初めて、「高齢者人口4割、働く人は現在の3分の2」という社会がもつかどうか、テストを受けることになります。

 もしかしたら、もたないかもしれない。だったら、働ける人で、働きたい人はみんな働こう、病気などで働けない人を助けよう、そうやって日本社会という共同体を維持していかないといけない。そういう観点から、女性が働くことに対して少なからず障壁になる配偶者控除は見直しをするべきだと思います。60年代に合理的だったこの制度は、2010年代に同じく合理的なのかどうか、検討するのは当然だと思います。

――配偶者控除の見直しをすることで、女性は本当に働くのかどうかということに対して疑問を持つ人は多いようです。

 専業主婦をパートにする効果と、パートをフルタイムにする効果の二つを考えてみる必要があると思います。私は、配偶者控除の見直しは後者のインセンティブにはなるのではと思っています。

 既婚女性の給与所得分布を見てみると、100万円が一番多い。これは103万円を意識しているのだと思う。配偶者控除を見直して、103万円の壁を克服すれば、100万円程度で収入を調整している理由はなくなるので、グラフの山は移動すると思います。