仏重電大手アルストムのエネルギー事業をめぐる争奪戦に決着がついた。米ゼネラル・エレクトリック(GE)と、独シーメンス・三菱重工業の日独連合が熾烈な争いを演じていたが、交渉の実質的な決定権を握る仏政府を口説き落とし、勝者となったのはGEだった。
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しかし、そのGEも無傷では済まなかった。当初は1.7兆円で、アルストムのエネルギー事業を丸ごと買収する思惑だったが、仏政府の反発と日独連合の対抗案を受けて大幅に譲歩。
買収はガスタービン事業のみにとどめ、「送配電」「再生可能エネルギー(洋上風力・水力)」「蒸気タービン・原子力」の3事業で、アルストムと折半出資の合弁会社を設立する新提案を発表したのだ。
原子力発電の事業や技術を自国に残したい仏政府に配慮し、「蒸気タービン・原子力」の合弁会社では、仏政府が原子力関連の問題で拒否権を持つことも認めた。
さらに、アルストムの鉄道事業強化を望む仏政府の意向をくみ、自社の鉄道信号事業をアルストムへ売却することも決めた。
極め付きに、仏政府はGE案支持の条件として、アルストムの株式を最大20%持つ筆頭株主として、経営への影響力を持つことを受け入れるようGEに迫ったのだ。
エネルギー事業で世界トップを走るGEがアルストム争奪戦を制すれば、「圧倒的な超巨人が誕生する」(複数の重電メーカー幹部)という危機感があったが、その超巨人には一部の経営が自由にならない“足かせ”がはめられた。