本連載では2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックを機に、日本のスポーツ行政や企業の経済活動がどのような変化を起こすのかについて、関係者への取材をもとに紹介してきた。最終回となる今回は、6月中旬に舛添要一・東京都知事によって突然発表された五輪会場計画の見直しや、170名の大所帯で始動した「顧問会議」の存在などを紹介し、混迷の兆しを見せつつある大会運営の課題について考えてみたい。
都知事の所信表明演説で発表された
会場計画の見直しに驚きの声も
6月10日に東京都議会で行われた、舛添要一・新東京都知事の所信表明演説。舛添都知事は演説のなかで、2020年に開催が予定されている東京オリンピック・パラリンピックの会場計画の見直しについて言及した。建設資材や人件費の高騰によって整備コストの急増が避けられないため、当初計画していた新施設の建設中止なども視野に、コスト削減をどれだけ図れるのかを検討していくと発表した。
知事就任後の2月26日に東京都議会で行った施政方針表明では、「世界一安全な都市」、「世界一福祉が充実した都市」、そして「世界一のオリンピック」の3点を実現させるために東京が先陣を切って改革を進めていくと語っており、世界一のオリンピックを目指すと語った舛添都知事が、先月10日に突然会場計画の見直しを発表した事には、驚きの声も少なくなかった。
昨年1月に東京都と東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会がIOC(国際オリンピック委員会)に提出した立候補ファイルによると、大会期間中に使用される競技会場の総数は37で、そのうち22会場が新設される計画であった。
見直しの対象となる施設に関して具体的な名前は挙がっていないものの、例えば、バスケットボールの試合会場として建設が予定されていた夢の島ユースプラザの建設が中止となり、さいたまスーパーアリーナが代わりに使われるといった案も浮上しており、各競技団体にとっては頭の痛い話だ。
東京2020オリンピック・パラリンピック組織委員会の戦略広報課は、会場計画の見直しについて動き始めたことは認めたものの、具体的にどの会場の見直しが行われるのかについては、言及することはなかった。
「現在検討している会場計画のレビューについては、2020年大会における大会レガシーの残し方、会場整備にかかる都民生活への影響、整備コストなどの視点を踏まえ、大会を成功に導けるよう、IOCやIPC、国際・国内競技団体との十分な検討と協議をしていくもので、この方針はIOCとも共有済みです。全体的な大会計画は、来年2月のIOCへの提出を目途に開催基本計画を現在作成中です」(同課)