消費税増税の影響が少しずつ出てきているようだ。5月29日付の本コラムで、消費税増税の影響は97年に近いのではないかと予測したが、その懸念が徐々に高まっている。
6月27日、重要な統計数字が公表された。筆者として注目していた、総務省から公表された労働力調査、消費者物価指数調査、家計調査だ。
労働力調査では、5月の完全失業率が前月に比べ0.1ポイント低下し、3.5%。これは16年5ヵ月ぶりの低い数字だ。金融緩和による雇用改善効果が着実に現れている。消費者物価指数調査では、5月の全国国消費者物価指数(生鮮食品を除くコア指数)は前年同月比3.4%。消費増税が物価に与える影響は2%程度なので、それを除くと、前年同月比1.4%。これも、インフレ目標2%の近傍なので、デフレ脱却が近づいてきた証拠だ。
本コラムで再三にわたって、十分な金融緩和をすれば、2年でインフレ目標2%の達成は容易であり、その結果雇用も改善すると言ってきた。まさにそのとおりだ。失業率もインフレ率も、遅行指標なので、これらのよい数字はこれまでの金融緩和の結果である。
非常に大きな消費支出の落ち込み
と同時に、5月29日付の本コラムなどで、消費税増税の影響は心配であると言ってきた。5月の家計調査を見る限り、筆者が懸念していたことを示すデータだった。1世帯当たりの消費支出(2人以上世帯)について、物価変動を除いた実質で前年同月比8.0%減った。長期のデータをみるため、家計調査内の消費水準指数でみてみよう。その統計が容易にとれる1981年以降の33年間では、最悪だった東日本大震災直後の2011年3月に次ぐワースト2位の数字だ。
これは、消費増税の影響だ。増税は過去2回、1989年増税(創設時、つまり0%→3%の増税)、1997年増税(3%→5%)なので、増税前1年間(4~3月)と増税後の2ヵ月(4月、5月)の差をみると、89年では▲4.6%ポイント、97年は▲2.4%ポイントに対し、今回は▲7.1%ポイントと落ち込みの大きさが際立っている。この悪い数字は、過去33年間のデータで見て、370回に1回起こるかどうかの最悪の数字だ(図1)。