日本でヤギが減ったきっかけは、1961年の農業基本法改正だ。これにより農業の大規模化が打ち出され、より経済効率の高い牛を飼うことが奨励された。その結果、広い牧草地を確保できる北海道を中心に乳牛を飼う畜産農家が増えていった。と同時に、米は米農家、野菜は野菜農家というように農業の専門化も進んでいったため、本州でもヤギを飼う農家はほとんどいなくなった。

――それにしても、ヤギが世界でそんなにメジャーだったとは知りませんでした。10億頭もいるとは……。

「世界的に見ると、こんなにヤギが少ない国はむしろ珍しいのです。ヤギの側から言うと『なんでこんなに少ないの?』という感じではないでしょうか。先ほどヤギはアジア・アフリカ地域に多いと説明しましたが、だからと言って、ヨーロッパ・アメリカに少ないわけではありません。ヤギが畜産商品として当たり前に普及している国はけっこうあります。ドイツ、スイス、オーストリア、フランス、イタリアあたりはスーパーの一角にBIO(バイオ=有機農産物)コーナーがありまして、そこで有機畜産物の一種としてヤギのミルクやチーズが普通に売られています。日本だと、ヤギを食べる食文化が定着しているのは沖縄県だけ。沖縄の郷土料理にヤギ肉を内蔵と煮込んだ『ヤギ汁』があるのはご存知ですか?」

――聞いたことはありますが、食べたことはありません。

「味はたとえるなら、モツ鍋にヤギ肉が入っている感じですね」

ヤギは牛・羊に比べて
グルメじゃない!?

――ところで、日本ではなぜ今、急にヤギの除草作業がこんなに注目されるようになったのでしょうか?

「ひとつには耕作放棄地の問題があると思います。これを管理するために牛、ヤギ、羊を活用することが検討されました。ただ、実際に除草作業をさせてみたら、牛と羊は思ったほど雑草を食べてくれなかった。彼らはやはりどうしても、柔らかい牧草を好むのですね。これに対して、ヤギはあまりえり好みしないで食べてくれる」

――つまり、好き嫌いがない?

「ここ(学内の傾斜地)は笹も多いんですが、ヤギだとこういう固い草も好んで食べてくれます。牛だとこうはいきません。雑草を食べさせようと思って放しても、やせ細って弱るまであまり喜んで食べません。人間の方が根負けしてエサをくれるのを知っているのかも」

“働くヤギ”が都市部でも増加中!<br />除草だけじゃないヤギが切り開く「未開拓ビジネス」ヤギは高いところが好き

――うーん、そこまで牛に読まれている……。

「それと、ヤギは高い所も難なく上って行きますから、傾斜地の多い日本の地形に合っているのです。ヤギは基本的に高い所が好きなんですよ。たとえば、机の下より上が好き。慣れれば人間の肩にも乗ります。メスだと成ヤギでも60キロくらいですから、たいしたことはありません。牛はその10倍以上体重がありますから、乗られたら大変ですけど……。というわけで、牛はそう簡単には扱えません。こんな風に係留しようと思ったら、ものすごく頑丈な杭が必要になります。たぶん、大きな機械で打ち込まないとダメでしょう。ちょっとやそっとの杭なら、抜いてしまいますから」