バットの使用を制限している公園が多いのは、振りまわすと危ないということだろうが、昔はそんな注意をされた記憶もない。バットが人に当たる事故がなかったわけではないだろうが、使っているうちに人が近くにいる時はバットを振ってはいけないということがわかってくる。ボールが飛び込んだ家の親父に怒鳴られることで迷惑をかけないようにと気をつける。そうして社会性を学んでいたわけだ。今の子どもたちは、そんな経験もなかなかできなくなっているのである。

「遊び」からスポーツの楽しさを――
プロ野球機構、日本公園緑地協会の取り組み

 それとは別に、子どもたちが「遊び」を通してスポーツの楽しさを知ることができないことも問題がある。今の子どもたちは野球、サッカーをはじめ、どの競技もスポーツ少年団などの地域のチームに入ることでスポーツを始めるケースが多い。それはそれで基本技術や団体行動での規律などを学べるからいいのだが、様々な事情でそうしたチームに入れない子もいるわけだ。また、チームに入ったとしても競技を楽しめるとは限らない。指導者が勝利至上主義でスパルタ指導をするタイプなら、そのスポーツを嫌いになってしまう可能性もある。

 スポーツ(Sports)の語源は「気晴らし」、「楽しみ」、「遊び」などを意味するDisportといわれている。「プレーする」のPlayも遊ぶという意味がある。スポーツは遊びから生まれたものであり、それをより楽しめるようにルールが整備され発展してきた。とくに球技はボールを介した遊びから楽しさを知るものだ。しかし日本の子どもたちはその機会を失いつつあるのだ。

 とはいえ現実問題、公園でボール遊びができなくなる流れは止められないだろう。気軽にボール遊びができない環境では競技の底辺も拡がらないし、ファンも育たない。なかでも深刻なのは野球界だ。昔は男の子なら誰もがやったことがあるキャッチボールをはじめとするボール遊びができなくなっているからだ。

 野球関係者も危機感はあるようで、日本野球機構(NPB)はこの4月、画期的な試みを行うことを発表した。プロ野球80周年記念事業『NPB 未来の侍プロジェクト』の一環として、各地の公園にボールを当てて遊ぶための壁を寄贈することにしたのだ。ボールを当てる壁は「ベース・ウォール」という名称で高さ2.7メートル、幅7.2メートル。硬質ウレタンフォームのボードの表面にFRPをコーティングしたもので強度と跳ね返りの良さが考慮されている。壁は緑色で9分割されたストライクゾーンが3つ描かれており、3人が同時にボールを投げて遊ぶことができる。