ITベンチャーでの活躍から、障害者の就労支援という福祉の分野へ飛び込んだ長谷川敦弥社長。24歳のときに、入社1年3ヵ月という異例のスピードで社長に就任し、赤字企業を瞬く間に軌道に乗せた。わずか6年で社員数100名から800名を超す企業へと成長。活動のフィールドを障害者支援から子どもの教育へと広げている。ソーシャルビジネスという新しい分野での活躍に注目が集まる若き経営者に、「障害」に対する考え方とこれからの教育について話を聞いた。(取材・文/黒坂真由子)
ユニークな子どもたちを受け入れる学習塾
―――障害者の就労支援から、学習塾「Leaf(リーフ)」へと、活動の幅が広がっています。
社会の側にある障害をなくそうという目標を持って就労支援をやってきたのですが、精神障害の方と話をしているうちに、気がついたことがありました。
ある利用者に、「いつ精神疾患を発症したの?」と聞いたことがあります。彼は「高校生のころ。中学生のころに暴力をふるいだして、そうしたら、家族からも暴力をふるわれるようになって。もともとは自分がきっかけなんです」と言ったんです。
「何で暴力をふるうようになったの?」と聞くと、「小学校2年生から勉強が分からなくて、お兄ちゃんと常に比較されて。中学生のときに何かが爆発したんだと思います」と話してくれました。この利用者の方の例に限らず、幼いころからの失敗体験の積み重ねの結果として精神疾患を発症したであろう人が多くいるのです。彼らは今、精神障害と言われていますが、彼らにとっての本当の障害はなんだったのか?私は彼らにあった教育環境がなかったことが障害であったと思いました。
社会に出てから非常に評価された
「個性」や「創造力」
実は自分にも思い当たる節があるのです。僕も、創造性を発揮しようとすればするほど、周りから迷惑がられるという経験をしてきました。それで、中学生になるころには、感性を出さなくなっていました。先生や友達に嫌われたくないですからね。
自分が感じることはどうも間違っているらしい。それはもしかしたら脳の問題ではないか、などと考えたりしていました。僕の育った環境も含めて、今の教育現場では個性があればあるほど、ネガティブに評価されることが多い気がします。
僕はたまたま自分を大事にする力が強かったし、家族にも恵まれていたので最終的には自分を守ることができたし、その個性が社会に出て働くようになってから非常に評価された。「なぜ、これだけ社会とミスマッチな教育システムになっているのか?」と疑問にも思いました。
しかし多くの子どもたちは自分を責めたり、自己評価がとても低い人に育ってしまいます。いわゆるユニークな子どもたちに、その子にあった教育を提供したら、人生は変わります。そんな場が今の日本にはない、だからそういう思いで、それぞれの子どもに合った教育を提供するLeaf事業を始めました。