麹町経済研究所のちょっと気の弱いヒラ研究員「末席(ませき)」が、上司や所長に叱咤激励されながらも、経済の現状や経済学について解き明かしていく連載小説。今回は、金融政策の弱点について問答します。(佐々木一寿)
「財政政策は、どんなに賢い人がやってもバラマキには違いないし*1、その発注が不公平に繋がるかもしれないし*2、ということで金融政策をチョイスしてみることにしましたが」
*1:ムダに使われる可能性と、将来の税収を現在使ってしまう、という懸念が指摘される。詳しくは第20回を参照
*2:用途に恣意性が生まれる、あるいは汚職に繋がるという懸念が指摘される。詳しくは第20回を参照
経済学部に進学するケンジは、前回まで学んだことをアタマのなかで整理しながら言う。
「その金融政策は、みんなに平等におカネを借りやすくする環境を作って、可能性がありそうなチャレンジャーにおカネを借りて使ってもらって、経済を活性化するという目的でやるんだということはわかりましたが、現実的にはちょっとヨワいところもあるということでしたが」
えらく吸収力があるな、この新しい大学1年生は。ガイド役を務める末席研究員は、好ましく頷きながらケンジのまとめを聞いている。
ケンジは、まとめの最後に質問をする。
「で、そのヨワイところってどこなんでしょうか?」
末席は、疑問を持つ学生というものは、いつの時代でも独特のいいオーラを放つものなんだろうな、と推測しながら答える。
「そうですね。端的に言えば、基本姿勢として、借り手を待つしかない、ってことですね」
「たしかに。強制しているわけではない以上、みんなが借りたくないと思っているのなら、それもしょうがないですよね、自由な意志によるのですから」
自由が好きなケンジは、それもやむなし、と思っているが、どこか歯がゆそうにもしている。
それを見かねた叔父の嶋野主任研究員がフォローに入る。
「不景気が続くと、いかに自信家であっても、尻込みしてしまうこともあるからね。たいていはそこそこ下がると、資金需要は湧いて出てくるものなのだが」