部門としての重要な戦い方を
徹底できない上司

 これらのシートを回収して、部下全員の書いたものを読んだ時、1枚1枚の違いの大きさにきっと驚かれると思います。まず、部下それぞれが捉えている「営業活動の流れ」は異なります。これは私のクライアントでもそうなのですが、例えば20人の営業スタッフがいるとすると、その人たちの営業活動の流れはみなバラバラなのです。これは何を意味しているのでしょうか?

 営業活動が個々人に任されていることを示しているのです。営業個人が先輩の営業活動から学んで、それを実践しているだけなのです。営業部門として重要な営業活動の流れをスタッフに教えていない、要するに、部門としての重要な戦い方を徹底していないということなのです。

 また、個別に見ると、よく書けている人とそうでない人の違いに気が付くと思います。営業成績が良い部下は、営業活動の流れも重要なポイントを記述しているし、問題点も具体的で、それに対する取り組み方も合格点でしょう。逆に、営業成績が悪い部下が書いたものは、活動内容に一貫性がなく、課題認識も表面的であるため、解決法も当たり前の一般論であり、そのままでは改善の見込みがないことがわかります。

 ここまでのアプローチについては理解できましたよね。でも、問題はここからです。

 これまで説明したのは、部下を育成するためのアプローチです。営業活動の流れが正しいかどうかは、経験もある程度使えるとは思いますが、顧客から学ぶことが一番大きいのです。部下の主要な活動が正しいか正しくないかは、部下の業績変化から評価する必要があります。部下自身がうまくいかないと考えている活動や、上司から見て問題がある営業活動を解決する方法が正しいかどうかも、部下に質問して考え方を確認して、そこから部下固有の解決法を伝えてあげる必要があるのです。

 部下の育成について3回シリーズで説明したので、上司として何が重要で、どのようなアプローチが必要なのかについては理解されたと思います。要するに、部下がシートに書き出した内容について、正しいかどうか、どこが間違っているのか、どのようにすればよいのか、ということに付加価値があるのであり、それを見ながら上司としてのアドバイスができなければ、やはり人の育成はできないということなのです。

 自分の頭を使って考えることのできる優秀なマネジャーや読者の皆さんならきっと、大きな付加価値を人に与えることができると思いますが、単にアプローチだけを人に伝えても成果にはつながらないことを十分に理解してもらいたいものです。それはまさに、質問者だけでなく、人を育成したいと考えている人が「問題解決の考え方」ができているかどうかなのです。

 つまり、問題解決の考え方のできない人は、アプローチを教えることはできても、業績を上げるために必要な取り組み方を他者に伝えることができないので、結局成果にはつながらないということです。