ハワイでの受け止め方

 ハワイで行われたフォーラムでは、日系人の退役軍人、ジェイムズ T. ヒライ(ジェネラル・ヒライ)と対談した。彼は、「アイゼンハワーは絵になりにくい男である」と指摘した。

 まさにその通りで、パットン将軍であれば3時間超もの長大な映画作品(『パットン大戦車軍団』)にもなり得るが、アイゼンハワーでは、1時間に満たないテレビドラマがあるだけだ。その作品も、Dデイ間近のイギリスの司令部で、史上最大の作戦遂行を前にして重圧に苦しむ姿が延々と映し出されており、パットンが主人公の映画と比べると、あまり爽快感はない。

 興味深かったのは、ハワイのフォーラム参加者が私の話を聞いて、アイゼンハワーについて再認識したことだ。アメリカ人であってもアイゼンハワーについて詳しく知る人はあまり多くないということだろう。「この本の英語版は出ないのか」などと声をかけてくれたのが、その証左だ。

 実際、歴代の大統領が自分の名前を冠したハイウェイなどをたくさん造ったりしているのに対して、アイゼンハワーはたいへん控えめで、その名を街で目にすることはあまりない。しかし、ノルマンディー上陸作戦は人類の歴史を変えた史上最大の戦いであり、それを最高司令官として遂行したアイゼンハワーは、やはり歴史的な人物であることは間違いない。参加者の多くは彼のその偉業をあらためて実感したようだ。

 余談だが、ジェネラル・ヒライはアイゼンハワーと同じ陸軍の出身だ。彼は、ベトナム戦争以来、米軍では、歩兵による戦い、そしてそれによる人命の損失という点について世論からの批判が強くなっていると語っていた。

 この彼の発言は、アメリカ軍の作戦の変化に表れている。湾岸戦争では誘導爆弾による精密爆撃が行われ、巡航ミサイルも使用されたが、地上戦主体の作戦はイラク戦争が最後の出番だった。今では2010年に発表された「統合エアシーバトル構想」が示すように、空海戦へと重点が移りつつある。その結果、新たな陸軍のあり方が問われているとのことだった。


米国の内戦「南北戦争」の意義
 ジェネラル・ヒライとアイゼンハワーの共通点はもう一つある。2人とも米国の内戦「南北戦争」の戦史を研究している。1861年から1865年の間、奴隷制の存続を巡ってアメリカが南北に分かれて戦ったわけだが、日本では明治維新に向けた幕末のころに、アメリカでは最初で最後の内戦が行われていたのだ。
 南北戦争が研究の対象となるのには理由がいくつかある。北軍のグラント将軍も南軍のリー将軍も、敵味方共に多くの人が評価しているので、客観的に研究できるだけのデータが揃っている。国内での戦跡めぐりも容易だ。また、この戦争では、最新技術の衝突も見られた。消耗戦も機動戦もあり、近代戦の本質がすべて見られる。ミシシッピー川を遡上する作戦もあり、これは水陸両用戦のはしりでもあった。
 ウエストポイントでも、60万人の戦死者を出した南北戦争についてはしっかりと学ばせている。作戦としては消耗戦が中心の第一次世界大戦よりも得られる教訓が多いからだろう。