前回は、労働力の観点から介護の問題をマクロ的に考えた。今回は、サービスの市場価値の観点から考える。

介護の総費用は、
GDPの4%強

厚生労働省の資料によると、2012年度の年間介護総費用は8.9兆円となった。これは、12年度の名目GDP472.6兆円の1.88%である。

前回述べたように、介護従事者の総労働力人口に対する比率は、10年で2.01%程度だ。GDPに対する比率がこれより低くなるのは、介護従事者の平均賃金が経済全体の平均賃金より低いからである。

 ところで、厚生労働省による「介護総費用」の中には、家族が提供している家庭内看護にかかわる費用はカウントされていない。これをカウントすれば、介護に必要な費用はもっと大きくなる。日本の介護は在宅介護中心なので、これはかなりのウエイトになっているはずである。

 その額を正確に推計するのは難しいが、第9回で紹介した生命保険文化センターの「要介護状態となった場合の公的介護保険の範囲外費用に対する経済的備えとして必要と考える資金額は、月額17.2万円」という数字が参考になる。有料老人ホームの月額利用料をみても、月17万円程度である場合が多い。これらから判断すると、この程度(年間200万円)が、家族が提供している要介護者1人あたりのサービスの価値と考えることができるだろう。

 要介護等人口が560万人であるので、年間11兆円強だ。これは、GDPの2.4%程度に相当する。

 家族が提供するサービスは市場を経由するものでないため、現在の統計ではGDPにカウントされていない。しかし、持家の家賃が帰属家賃としてGDPにカウントされるのと同じ意味で、本来はこれもGDPに含まれるべきだ。

 そうだとすれば、介護サービスの総額は、厚生労働省の費用8.9兆円と合わせて、GDPの4%強ということになる。これは、かなり高い比率である。介護活動は、日本の経済活動の中で無視しえぬウエイトのものとなっている。しかも、この比率は将来さらに高まることが確実である。