映画で知る第2次世界大戦〈6〉
ヨーロッパでの戦い

 太平洋の島国に住む日本人にはその関係性が今一つとらえきれないことが多いように思える欧州戦域や大西洋での戦いですが、これらを描いた映画は数多くあります。戦いの全貌を理解するため、比較的史実に沿った内容の作品を中心に紹介していきます。

東部戦線

 1941年6月、バルバロッサ作戦の発動により、2年前に不可侵条約を結んでいた独ソが戦闘状態に突入しました。緒戦はドイツ軍の快進撃が続き、モスクワ近郊にまで迫ります。ところが、秋になって雨が降り続き、文字通り泥沼化した戦線は、「冬将軍」の到来で潰えてしまいました。

 ソ連はウラル山脈の後ろに設けた軍需工場がフル稼働し、強力な兵器を量産しながら、連合軍の一員として米国からも武器援助を受け、反撃態勢を整えていきます。東部戦線の戦いの中心をなす独ソ戦は、ソ連では「大祖国戦争」と呼ばれています。

 そのソ連が反攻に転じた史上最大の戦車戦「クルスクの戦い」(43年7月)から45年5月のベルリンの戦いまでを取り上げた5部構成8時間弱の超大作「ヨーロッパの解放」は、まさに国策映画でした。

 他に、「モスクワ大攻防戦」(1985)、「レニングラード攻防戦」(1974)など初期の戦いを描いたソ連作品もありますが、反攻に転じるきっかけとなった戦いが、42年6月から翌43年2月まで続いたスターリングラード攻防戦です。第2次世界大戦で最大の激戦の1つとも言われる市街戦を描いた作品はたくさんあります。

 ソ連側の視点で描かれた作品としては「スターリングラード大攻防戦」(1972)、「祖国のために(バトル・フォー・スターリングラード)」(1975)でしょうか。

 新しいものでは、ジュード・ロウが実在したソ連の凄腕のスナイパーを演じる「スターリングラード」になじみあるかもしれません。

 東部戦線では、赤軍とともに戦うパルチザンの姿を描いた名作も目立ちます。

 長らくソ連国内では上映を禁じられてきた「道中の点検」。ドイツ軍に脱走していた男がパルチザンに逃げてくるも、疑心暗鬼の目を向けられる中、彼は……というヒリヒリするような緊張感のうちに物語は進みます。ここでは共産国家の軍特有の政治委員が登場して、隊長とやり合う様も描かれています。

 もう一本、中編「ローラーとバイオリン」が卒業制作だった当時30才のアンドレイ・タルコフスキー監督の処女長編作「僕の村は戦場だった」。両親を殺され、パルチザンの協力者となった12歳の少年イワンの悲しい結末を描きます。

 ナチの蛮行は東部戦線でも際だっていました。中でも、白ロシア(現ベラルーシ)でのナチス親衛隊の特別行動隊「アインザッツグルッペン」の村民虐殺を余すところなく描いた「炎628」は凄まじいの一言。この作品、生半可な気持ちで見ると後悔します。

 ポーランドのレジスタンスは、アンジェイ・ワイダ監督が抵抗三部作(「世代」「地下水道」「灰とダイヤモンド」)としてしっかり記録しました。占領下の廃墟と化したワルシャワを生き抜いた体験を描く「戦場のピアニスト」(ロマン・ポランスキー監督)も忘れられない作品でしょう。

 東部戦線の作品は、どれも腹にずしりと来るというか、とにかく重いものが多いので、最後はこちらの痛快な作品を。サム・ペキンパー監督の「戦争のはらわた」です。プロイセン貴族の大尉と百戦錬磨の軍曹(ジェームズ・コバーン)の関係を、出世命の部長と現場の係長に置き換えて見ると、スカッとするかもしれません。

ヨーロッパの解放Освобождение 1972ソ連 
[監督・脚本] ユーリー・オーゼロフ [主演] ニコライ・オリャーリン、ラリーサ・ガルブキナ
スターリングラードEnemy at the Gates 2001 英・独・米・アイルランド
[監督・脚本] ジャン=ジャック・アノー [主演] ジュード・ロウ、ジョセフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ
道中の点検TROVERNA NA DOROGAKH  1971ソ連
[監督・脚本] アレクセイ・ゲルマン [主演] ロラン・ブイコフ、ウラジミール・ザマンスキー、オレグ・ボリーソフ
僕の村は戦場だった Иваново детство 1962ソ連
[監督・脚本] アンドレイ・タルコフスキー [主演] ニコライ・ブルリャーエフ、ワレンチン・ズブコフ
炎628Иди и смотри 1985ロシア
[監督・脚本] エレム・クリモフ [主演]アリョーシャ・クラフチェンコ、オリガ・ミローノワ
戦争のはらわたCross of Iron 1977英・西独
[監督・脚本] アンジェイ・ワイダ [主演] ジェームズ・コバーン、マクシミリアン・シェル、ジェームズ・メイソン