相撲を社会史、文化史の視点で論じた名著に『力士漂泊 相撲のアルケオロジー』(宮本徳蔵著)がある。この本で納得させられるのは、なぜ相撲が古事記の時代から人々に親しまれ、現代まで受け継がれてきたかの論考だ。

 それは普通では考えられないほどの並外れた体や力を持つ男たちの戦い、つまり異界を覗き見たいという人々の欲求を満たすのが相撲だということだ。今の大相撲の力士たちも十分人並み外れた強さを持ってはいるが、メディアなどで頻繁に取り上げられ、親しみやすい存在になっている。それをもう一度、異界への興味に引き戻す存在が逸ノ城ではないだろうか。

 11月場所(九州)の番付では逸ノ城は関脇に昇進する可能性がある。このまま逸ノ城を大関、横綱まで突っ走らせては幕内力士の沽券に関わるわけで、攻略法を各自研究して対戦するだろう。しかし、このモンスターはそれも一蹴しそうな気配がある。

 これからは対戦する力士が逸ノ城に勝てるかどうか、が大相撲の関心事になる時期がしばらく続くのではないだろうか。そんな盛り上がり方も面白そうではある