1970年代末からの日本映画やドラマブームに続き、1980年代から現在に至るまで漫画やアニメも、中国の若者の間で浸透している。そのため、今の中国のすべての世代の人たちには、それぞれ親近感を持つ日本人俳優やアニメキャラクターが存在する。

 ゆえに戦争や歴史の問題にひとたび直面すると、日本に対するマイナスイメージが湧き出し、反日デモにも参加するものの、日本に対する親近感までは払しょくされていない傾向が依然見られる。たとえば、2005年と2012年の反日デモの際、日本のカメラや電気製品を持参しながら、デモ行進に参加する中国人が多数いた写真が公開されている。

 日本車を運転して反日デモに参加して、被害に遭った人もいた。筆者が韓国人の知り合いに、こうした事実を紹介すると、彼女は韓国ではありえないことだと言った。同じ反日感情と言っても、中国人の対日観は韓国と異なり、かなり特殊であることがうかがえる。

日中間の歴史認識問題は
歴史学のロジックに合致しない

 愛憎が入り混じった複雑な中国人の対日観は、2006年以降に日中関係の改善ムードが漂い始めた際に、対日イメージを大幅に改善できた一因であろう。とはいえ、なぜ2005年の反日デモの後(2006年~2008年)は日中関係に改善が見られ、2012年の反日デモ以降、同様の動きがなかなか現れないのであろうか。

 前回の場合、関係改善に向けて日中両国の政府および民間による多大な努力が払われ、それが奏功した。しかし、2012年以降の日中関係悪化後の動きを見ると、日中双方の国民レベルで相互イメージの改善に向けた努力はほとんど起きていない。

 今回は2005年とどこが違うのであろうか。領土問題は歴史問題と違い、国民国家であればどの国の政府も安易に譲歩できない問題だからである。中国側から見れば、尖閣諸島の領土問題は歴史問題の一環であるため、なおさら譲歩できず、強硬な姿勢を貫くしかない。

 日本側の立場から考えても、領土問題をめぐる対中世論が著しく悪化した原因の一つには、長期に渡る日中両国の相互不信が挙げられ、その相互不信の源は歴史認識問題である。

 1980年代以降、日中間で歴史認識の問題が断続的に発生し、日中関係に構造的な欠陥が作り出されている。日本人から見れば、戦後70年近く経過し、戦争は遠い昔の話となったにもかかわらず、歴史問題を蒸し返され、いつも中韓から文句を言われてうんざりだと感じている人は多いであろう。

 筆者は来日して十数年経った。専門が日中関係史ということもあり、歴史問題をめぐる討論には、数え切れないほど参加してきた。正直なところ、筆者自身、この問題に辟易しており、早く収束してほしいと願っている。

 しかし、時間の経過とともに、歴史問題の影が薄れるどころか、1980年代を境に、特に1990年代以降は一層色濃くなった。この現象は、歴史学のロジックに合致しない。だからこそ、多くの日本人が憤りを覚えるのであろう。