現在、半ば金融庁が主導するような形で、地域金融機関の経営統合が進められそうな気配がある。しかし、地域金融機関にはメガバンクなど大手金融機関にはない、地域密着型経営という特徴があり、単に規模や拠点を増やせばいいというものでもない。経営統合の是非は微妙な判断を要する事項だ。地域金融機関の経営統合について考えてみよう
なぜ経営統合なのか
近年、金融庁は地域金融機関の再編を促す姿勢を強めている。具体的には、昨年9月の検査・監督方針以降、地域金融機関のビジネスモデルの「持続性」を検証することを明言し始めており、去る9月6日に出された「平成25年事務年度 中小・地域金融機関向け監督方針」でも、冒頭部分で「急激な社会・経済の変化や国際規制の変更等にも対応するため、経営陣が責任ある経営判断を迅速に行う重要性が増している。同時に、各種のリスクを的確に把握した上で、5~10年後を見据えた中長期の経営戦略を検討することが重要である」と指摘している。
確かに、地域金融機関が直面する「急激な社会・経済の変化」は止まるところを知らない。たとえば、(1)地方都市を中心に人口減が止まらないこと、(2)経済のグローバル化の結果として、地方に基盤のある製造業が海外企業との競争にさらされるようになっていること、(3)少し前までの円高局面で大企業が海外進出を進めてきたため、地域の下請け企業も海外進出を進めていること、(4)地銀と第二地銀だけで100行を越えるいわゆる「オーバーバンキング」であることに加え、メガバンクなどとの競争も激化しているため収益性が落ちてきていること、そして、なんといっても、(5)国内基準行の新たな自己資本規制の適用が開始されたことが、直接の引き金となりつつある。
国内基準行の自己資本比率規制は、最低自己資本比率の水準自体については4%と従来と変わらないものの、自己資本の質について、普通株式や内部留保等「コア資本」と呼ばれるものに限られたため、劣後債(他の債務比べ返済順位の低い債券)や繰延税金資産など、これまで自己資本に算入できていたものが除外されることになり、従来基準と比べて格段に厳しくなった。経営統合を進めれば、店舗・人件費など経費の削減が進むことによって収益力が増す結果、内部留保も厚くできるため、自己資本比率規制の達成が容易になるかもしれない。