10月7日、青色発光ダイオード(以下、青色LED)の開発で、赤崎勇名城大終身教授、天野浩名古屋大教授、中村修二米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授の3氏がノーベル物理学賞を受賞し、日本中が沸き立っている。3人の業績は多くのメディアで報道されているので、ここでは産業としての青色発光ダイオードに焦点を当ててみよう。
科学技術が急速に発展した今日、ノーベル賞(特に物理学賞)は素人にはチンプンカンプンな基礎研究に与えられる傾向があった。20世紀初頭にまで時計を戻すと、ノーベル賞が与えられたアンモニアの合成法は、そのおかげで窒素肥料が合成できるようになり、農業生産の飛躍的増大に貢献し、化学産業を勃興させた。ペニシリン発見は抗生物質を生み、人類を化膿から救いだして、製薬産業を発展させた。青色LEDもすでに実用化・産業化されており、だれにでもその社会的、産業的価値が分かりやすい。
青色LEDの革新性は「白」にあり
LED(発光ダイオード)とは、電圧を加えると発光する半導体素子のこと。赤色LED、緑色LEDはすでに開発されていたが、青色LEDの実現は20世紀中は難しいと言われるほど、その開発は困難を極めていた。その中で、赤崎、天野両氏が青色LEDの原理を解明し、中村氏が量産技術を確立した。
青色LEDは、「青」そのものとして使われるより、実は 圧倒的に「白」に使われている。青LEDの周囲を蛍光色素で囲むと、青い光は黄色い光に変換される。青の光と黄色の光のミックスで白色光となる。
1996年に開発された白色LEDの2大用途は、照明とディスプレイ(TV)で、白色LEDの誕生が両者の世界を大きく変えた。ただ、白色LEDは、ほとんど照明としてのみ使われており、ディスプレイを変えたと言われるのに、ディスプレイそのものとしては使われてない。