地方創生に深く関わる
「ソフトレガシー」
こんにちは鈴木寛です。
10月にも掲載されると思いますが、私の生まれ故郷である兵庫県の地元紙、神戸新聞に「東京五輪パラリンピック 関西でできること」というタイトルで短い論考を寄稿しました。私にオファーがあった理由として東京オリンピック・パラリンピックが、関西の人々にはどうしても「他人事」になってしまう、兵庫県を含む関西に大会の効果をどのようにもたらすかといった問題意識があったようです。
私としてはオリンピック効果というものは、経済効果、つまり新興国の大会にありがちなインフラ建設などの即物的な「ハードレガシー」を残すだけではない、スポーツが人や地域に活力を与えるヒューマンパワー、言い換えるなら「ソフトレガシー」の意義をもっと評価すべきだと考えています。たとえば関西を拠点に活動する著名なアスリートが、NPO活動で地域住民の体育力向上やスポーツ文化の普及に貢献しています。
論考では、関西地域のスポーツ界が持つソフトレガシーの可能性について述べましたが、実は今回のテーマである「地方活性化」、安倍政権が標語として掲げるところの「地方創生」の問題にも深くかかわるところです。
地方創生の視点から論考を補足しますと、たとえば2020年のオリンピックの前年には、アジア初開催となるラグビーのワールドカップが日本で行われます。東京の新国立競技場がメインスタジアムとして、オリンピックの「こけら落とし」も兼ねて使われる計画ではありますが、日本国内では札幌や福岡のような都会だけではなく、新潟や長崎等の地方も会場候補地に手を挙げています。もちろん関西でも大阪・長居、神戸・御崎公園が主な候補地に入っているだけでなく、京都でも2ヵ所、そして高校ラグビーの聖地、東大阪の花園も開催候補に意欲を示しています。
おそらく関西では最低でも2会場、もしかしたら3〜4会場も考えられ、東京以上に盛り上がる可能性があります。やはり全国高校ラグビー選手権や神戸製鋼の活躍等で培ってきた伝統、まさにソフトレガシーの力によるものです。
関西でラグビーW杯で多数の会場運営を任されれば、もともと持っているレガシーはさらに磨きがかかることでしょう。アジアで初のW杯という貴重なホスピタリティ経験が市民に自信と誇りをもたらし、あるいはラグビーを目玉にスポーツで市民の健康、子どもたちの健全育成につながるソーシャルキャピタルになる可能性が強く期待できます。