経営破綻が差し迫っていたわけでないにもかかわらず、繊維の名門、ユニチカが375億円にも上る金融支援を受けた。同社はなぜ、資金を必要としたのか。
今年7月末、繊維の名門、ユニチカは、三菱東京UFJ銀行などの主力取引銀行や事業再生ファンドから、第三者割当増資で総額375億円を調達した。
うち、275億円は借入金の返済資金に充てるデット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)。同時に43の金融機関に対して3年間、1612億円の債務残高を維持する約束も取り付けた。
通常、こうした巨額の金融支援を受ける企業は、経営破綻が差し迫っていることが多い。だがユニチカは過去10年、本業で一定の利益を稼いでおり、営業赤字に陥ったことすらない。数年に1度、特別損失を計上して100億~150億円の最終赤字を出す程度だ。
大きくはもうからないが、致命的な赤字も出さない──。だからこそ、財務は脆弱でも“緊急事態”には至らなかった。
ではなぜ金融支援を受けたのか。
ユニチカは、本業での利益を出し続けた10年間も、資金面での苦労が絶えなかった。
食品の包装などに使われるナイロンフィルムといった高分子事業は稼ぎ頭である一方、成長のために巨額の投資が必要だった。にもかかわらず、借入金が年商規模に相当する額に膨らみ、返済負担が重くのしかかっていたのだ。