ただ一方で、現状の入試制度のなかで問題になっているのが、推薦・AO(アドミッション・オフィス)入試です。実際にいま、この推薦・AO入試で約半分ぐらいの生徒が大学に入学しているのですが、この推薦・AO入試は論文や面接が中心で、ほとんど学力が問われていないのが実情です。その結果、基礎学力がその大学が求めるレベルに達しない学生が増えたという問題も出てきています。多様な学生を採ろうという試みは評価しますが、推薦・AO入試は決して学力不問の入試であってはなりません。一定の学力基準を担保することは不可欠です。その意味でも新たな「達成度テスト」は、推薦・AO入試における基礎学力の判定に活用することもできます。

 山には富士山型や八ヶ岳型といろいろあり、その登り方にいろんなルートがあるように、入試にもいろんな選択肢があってもいい。それはつまり、どんな子どもにもチャンス、可能性がめぐってくることにもなるのです。

入口だけでなく、求められる「出口」管理

――そうした多様な入試の時代になると、各大学が独自のカラーを持つことが重要になりますね。これまで、多くの総合大学は偏差値の差はあるものの、実はそんなに特徴はなかった。しかし偏差値というモノサシがなくなってしまうことになれば、各大学は自分たちが求める学生像を明確に示し、それと同時に、自分たちが提供できる教育サービスの内容もきちんと提示する。ここで何が学ぶことができ、どう成長できるのかを、これまで以上に学生たちに示さなければならないということですね。

下村 そのとおりです。「大学入試制度を変える」ということは、「大学を変える」ということでもあります。大学が自分たちの教育方針を、入試という「入口」できちんと示すことは、学生とのミスマッチをなくし、4年間かけて学生の能力をしっかりと伸ばすことができるようになります。

 さらには、日本の成長を支える人材を世の中に送り出すことも、大学の重要な責務です。だからこそ入試という「入口」だけでなく、卒業という「出口」管理も厳しくしっかりやってほしいと思います。実社会で活躍できるレベルに達していなければ卒業させないという覚悟も必要です。

 また、入試制度と大学が変わることで、高校以下の教育も大きく変わる可能性も秘めています。自分は何を学びたいのか、どのようなキャリアをめざしたいのかといったことが見つかっていないと、漠然と大学受験をするしかありません。だからこそ、早い段階から自分の良さや強みを把握し、自分自身が輝くことができるための選択肢を持つ意欲も大切です。

 ちなみに、東大の濱田純一総長は機会があるごとに学生たちにこう言っています。「タフな東大生になってほしい」と。単に勉強ができるだけではなく、あらゆることに意欲的にチャレンジできる、精神的に強い学生を東大も求めているのです。こうしたタフな東大生育成の一環として、東大は創立以来初めてとなる推薦入試を2016年度から導入することも決めています。このように大学もメッセージを発し、入試制度も大きく変わろうとしているいま、これから大学をめざす高校生以下の学生の皆さんにも、ぜひ自分に自信を持って、自分自身が輝くための道は何なのかをしっかりと考えてほしい。私はそう思っています。

(文・構成/ダイヤモンド社 クロスメディア事業局 宮田和美)

【後編につづく】後編は10月28(火)公開予定です。