第1回では、前編として、「会社の将来を創る」人事に必要な適性、能力について、私の考えをご紹介しました。
ではその適正や能力は、どのような成長の機会を経ることで磨かれていくのか。
私がお会いしてきた方々や、私自身の異業種企業での人事経験に基づく考察やエピソードを、皆さんの議論や省察のきっかけになれば……と、ご提供したいと思います。
感じていた
コンプレックス
「人事部しか知らない人事パーソンでよいのだろうか?」
これは私自身が20代後半に漠然と抱えていた疑問です。「ひとごと部」と言われるのが嫌で、できる限り現場感覚を持ちたいと考えていた中、「人事以外の経験は新卒研修におけるジョブローテーションのみ」という経歴にコンプレックスを持っていたのかもしれません。
そのジョブローテーションですが、当時、その会社(事業内容はホテル経営および運営)の育成施策として、新卒入社社員に1年間義務づけられていたものです。
具体的には、グループホテルの本丸といわれる旗艦ホテルにおいて、ホテル事業の中核部門(宿泊・宴会・料理と飲食)での実務経験を積むために、2ヵ月ごとに部署を異動するというプログラムでした。
ただし、このプログラムの対象は大卒または大学院卒のみとなっていたため、ホテル事業を支える多くの専門学校卒や高校卒の仲間に対して、申し訳ない気持ちを感じながらも、現場で一緒に働いていた記憶があります。
では、当時の私のように、新入社員が2ヵ月ごとに部署異動することで何を学ぶのか?
まず思い浮かぶのは次のような内容ではないでしょうか。
(1)実務経験を通じて、自社ビジネスへの理解を深める
(2)事業運営に必要な基礎知識とスキルを身につける
確かに、これらは「最低限」学ぶべきことだと考えます。
上記に加え、実際にジョブローテーションを経験した立場として痛感したことは次の3点です。
(3)新しい環境で、迅速に人間関係を構築できる力
(4)指示されなくても仕事を見つけられる力
(次から次へとやってくる研修生に対し、こと細かく対応してもらえるとは限りません……)
(5)経験から少しでも多くを学び取ろうとする力
特に、最後のポイント(5)は自身を含め同期を客観的に見ていた中で、個人差が大きいと感じた部分です。
(3)(4)は日常業務への影響が目に見える形で現れますが、(5)は“その時”には大きな影響が顕在化しないため、どうしても当事者の意識が向きづらいのかもしれません。
「言われたことをちゃんとやればそれで良い」と考えて、日々の業務だけをこなしている仲間もいましたし、「この業務フローはどうすればもっと効率化できるか」という視点で業務に取り組んでいる仲間もいました。
言うまでもなく、成長の源泉としての「経験」の存在は大きく、いかに経験から学ぶことができるかが、自身の成長スピードを左右します。
この基本を社会人の早い段階で身につけ、習慣化できるか否か、これは人事パーソンだけでなく全てのプロフェッショナルに対して重要な要素であることは明白です。