農作物の無人販売所が成立するのは、立ち寄った人がお金を置いていってくれるからだ。もしもそこで、利用者の半数未満しかお金を払ってくれないとしたらどうなるだろう?
荒唐無稽な話のようだが、そんなたとえ話を笑い飛ばせない分野もある。オンラインの海賊版被害は、コンテンツ流通のエコシステムを揺るがしかねない深刻な問題なのだ。
海賊版は許さない!
官民共同の対策キャンペーンがスタート
経済産業省が平成25年度に実施した調査で、ファンに占めるオンライン海賊版ユーザーの比率が、アメリカではマンガ・アニメともに5割以上にもなることが判明した(日本ではマンガ7%、アニメ17%)。先のたとえ話そのままの事態が、一部では起きているということだ。
このままではいけない、と経済産業省が呼びかけて、アニメ・マンガ産業の企業15社が集まって設立されたマンガ・アニメ海賊版対策協議会は、今年7月30日、海賊版対策キャンペーン「MAG(Manga-Anime Guardians)PROJECT」をスタートさせた。
マンガ約500作品、アニメ約80作品を対象に、5ヵ月ほどをかけて集中的に海賊版を見つけ出して削除するというもので、同時に、正規版リンク集サイト「Manga-Anime here」もオープンさせて、ユーザーを正規版に誘導する。
このMAG Projectが意識啓発のためにYouTubeなどで配信している動画「Thanks, friends」がちょっとした話題になっている。海賊版の利用を咎めるのかと思いきや、意外にも「ありがとう」という感謝の言葉を有名キャラクターが語るシーンをつなぎ合わせたものだ。
映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のラストを飾る、主人公の故郷シチリア島で風紀上の理由からカットされたキスシーンばかりをつなぎ合わせたフィルム上映を想起した人もいるかもしれない。なかなか感動的な動画だが、検索しても、残念ながら英語版は見つからなかった。これでは思いは日本人には伝わっても、海の向こうには広がらないかもしれない。