今月中旬、上海師範大学での講演を終えた私は次の講演会場に行かなければならなかった。時間が迫ったので、大学の若い女性教師がキャンパス内の道を案内してくれた。ちょうど夕暮れに近づいていた頃で、夕日に照らされたキャンパス内のプラタナスも、落ち葉が点々と散らばっている青い芝生も金色に染められ、非常に美しい。

 思わず「きれいだ」と感想を漏らした。女性教師が「本来は落ち葉も美しい秋の景色なのに、ボランティアの学生たちが毎日、その落ち葉をかき集めて捨ててしまった」と応じてくれた。環境保持と精神的風流とのバランスをどう保つのか、大学行政の力量が試される課題だ、と思いながら、大学の正門の方向へ足を急がせた私だった。

 しかし、自然を愛でる人々の意識は確実に変化が起きている。政府行政もこうした意識に対応する努力を見せ始めた。

上海市が2011年から
2本の通りを「落ち葉ロード」に

 暦の「小雪(しょうせつ)」が過ぎると、上海も次第に冷え込みが厳しくなり、街路樹のプラタナスやイチョウなどの葉はだんだんと色づき、秋風が吹けば、ひらひらと舞い落ちる。この邪魔者扱いを受けやすい落ち葉に対して、昨年、徐匯区は思いきった行動に出た。区内で初めて、最も情緒ある2本の通りを2週間のあいだ「落ち葉ロード」と定め、落ち葉を都市の景観の素材の一つとした。

 落ち葉ロードに選ばれた通りは武康路と余慶路で、前者は中国歴史文化名街に指定された通りだ。この2本の通りはヨーロッパの風情が色濃く漂い、道端には背の高いプラタナスがたくさん植えられている。ヨーロッパスタイルの古い洋館が街路樹の陰から見え隠れし、硬いアスファルトの上に黄金の落ち葉が敷き詰められているさまは、まさに素晴らしい「動く油絵」そのものだ。

 ちなみに、武康路は全長1183メートル、幅が12~16メートルで、沿道には優秀歴史建築が総計14ヵ所、歴史的建築が残されているところが37ヵ所ある、文化の薫りが漂う道だ。余慶路は全長768メートル、幅は15~16メートル、上海で景観を守るために永久に拡幅しないと指定された64本の通りの一つである。