何人ものお笑い芸人や今年3月に亡くなった元カリスマバイヤーの藤巻幸夫・参議院議員も患っていたことで知られる「急性膵炎」。実はこの患者が年々、増加している。1987年には1万4500人とされていた急性膵炎の推計受療患者数は、2009年には5万8474人に。その後も増加傾向にあるという(厚生労働省「難治性膵疾患にかんする調査研究班の全国調査」より)。急性膵炎は適切に治療を行えば完治するが、対処を誤り重症化すれば最悪、死に至るケースもある。肝臓とともに、“サイレントキラー”と呼ばれる膵臓の病に早く気がつくには、どうすればよいのか。知っているようで知らない「急性膵炎」の怖さについて、東邦大学医療センター大森病院一般・消化器外科の金子弘真主任教授に話を聞いた。(聞き手/医療ジャーナリスト 渡邉芳裕)
お腹・背中に激痛が走ったら疑え!
最悪なら多臓器不全で死に至る「膵炎」
――膵臓とは、どのような役割を果たす臓器ですか?
東邦大学医療センター大森病院 一般・消化器外科主任教授 1952年東京生まれ。76年東邦大学医学部卒業。同大医療センター大森病院にて研修。87年からアメリカに留学し、コネチカット州立大学ハートフォード病院などで学ぶ。89年帰国。94年東邦大学医学部外科学第2講座助教授、現職に至る。日本外科学会代議員、日本消化器外科学会評議員、日本肝胆膵学会評議員、日本内視鏡外科学会評議員、海外外科学消化器外科の多数の編集委員。
膵臓には主に2つ役割があります。1つは「外分泌機能」と呼ばれるもので、食物を分解する消化酵素(リパーゼ、アミラーゼなど)を出します。もう1つが「内分泌機能」で、インスリン、グルカゴンという2つのホルモンを分泌して体内の血糖値のバランスをとっています。
――膵炎には「急性膵炎」と「慢性膵炎」があるといいますが、それぞれどういった病気ですか?
急性膵炎は、なんらかの原因によって膵臓から消化酵素が過剰分泌され、それによって自ら膵臓を消化し、壊してしまうものです。慢性膵炎は、そうした炎症を繰り返すことによって、徐々に膵臓の正常な細胞が崩壊されていく病気です。慢性膵炎のなかには、強い腹痛とともに急性膵炎と同じ症状に見舞われるケースもあります。それは、慢性膵炎の急性憎悪と呼ばれています。