Q.金融庁は上場企業に関して、社外取締役を複数人設置するという指針案を検討しているようですが、社外取締役の増加によって上場企業の収益性は本当に改善するのでしょうか。

収益性向上にも企業統治強化にも無力
役員の人数を無駄に増やすだけだ

A.社外取締役の増員案ですが、そもそも上場企業の収益性を向上させたいからとう理由で検討しているのではなく、単に『社外取締役を複数人配置すれば、経営陣相互の監視や牽制が実効性をもつようになり、それによって適正な企業統治(コーポレートガバナンス)ができる』という発想によるものです。すなわち、机上の空論を議論しているに過ぎません。

 そもそも社外取締役の役割を十分に果たすことのできる人材が、日本にどれほどいるというのでしょうか?

 十分に機能を果たすためには、その企業の事業内容もある程度以上わかったうえで、仮に生え抜きの取締役と緊張関係に至ったとしても、求められる適切な判断と対応をとる必要があります。

 当然、それなりのリスクも少なくありません。それが果たして可能でしょうか。むしろ、社外取締役を複数人置くことで、企業の意思決定スピードが落ちてしまうリスクもあるでしょう。

 そう考えると、社外取締役は、結局は霞が関の官僚や大企業OBの天下り先の受け皿になってしまうのが関の山かと。もしかすると、そういった裏の意図も含まれているのかとも考えたくなります。

 社外取締役の増員は企業にとって“規制の強化”に当たります。もちろん表向きは立派な意図があるわけですが、行政が規制強化に動くときの意図は“自分たちの利権・ポストの確保に主眼がある”と言っても過言ではありません。