「同じ注意は2度言わせない」という
緊張感が感性を育む
それが毎日続くのは苦痛ですから、徐々に「怒られる前に何とかしよう」という気持ちが湧いてきました。
私は「同じ注意は2度言わせない」と自分自身にルールを課しました。
すると、うまく先回りできるようになりました。
現場のまずいところは先回りして改善しておきます。
漫然と巡回していたときは気づかなかったことが、父より早く見つけなければ公開処刑されるという緊張感を持つと、見えてきました。
「注意される前に手を打とう」と考えながら行動すると、気づく力が高まります。
父が戦略的に私を教育してくれたのかどうかはわかりません。
でも、甘やかされた環境にいたら、気づく力は育まれなかったでしょう。
父に怒鳴りつけられたことで、父より先に気づこうという意識が高まり、その結果、少しは感性が磨かれたのだと思います。
気づく力が高まると、どんなものが人に喜ばれるのかをアンテナでキャッチできるようになりました。たとえば、雑誌でカフェが特集されていたら、
「うちの里山公園でもできる! やってみよう!」
というアイデアが生まれました。
アスレチックが紹介されていたら、
「子どもたちが喜びそう! 里山公園内にアスレチックをつくろう!」
など、2児の母なりのアイデアが生まれました。
先読みする習慣が身に染みついたことで、みんなに喜んでもらえるものは何かをキャッチできる感性が私に備わったのでしょう。
最終的なゴールは共有しても
「手段は違う」と割り切る
2代目、3代目の経営者は、先代の感覚や仕事のやり方を意識します。
自分と先代と比較して、似ている部分を嫌だと思ったり、わざと違うことをやろうとしたりします。
私は意識しすぎるのはよくないと思っています。
まず、似ているところは必ずあるので認めてしまったほうが楽です。
父の代から石坂産業で働いている社員には、私の中に父親のDNAが入っていると言われます。自分では気づかなくても、絶対DNAを受け継いでいるはずです。
ただ問題なのは、先代のやり方にこだわりすぎることでしょう。
私はもっと柔軟でいいと思っています。
最終的なゴールを共有することは大切ですが、同じプロセスである必要性はありません。2代目は2代目のオリジナリティを持っていていいと思うのです。
私は父と「永続企業」というゴールは共有していますが、どのように永続企業にするかというプロセスは違います。
人にはそれぞれ個性があり、たとえ親子であっても、兄弟であっても、性格、能力、適正などは一人ひとり違います。
だから目的を達成するまでのプロセスは違っていて当然。そう考えると、柔軟に打つ手を考えられると思います。