自主的な勉強会に残業代がつくと
やる気が薄れてしまう理由

 本連載の第25回では、アンダーマイニング効果に少しだけ触れた。これは、せっかく内発的動機付けで動いている人間に、下手に外発的動機付けをしてしまうと、内発的動機付けが減退してしまうという効果だ。

 たとえば、社員が自主的な勉強会を開いていたとする。それに対して「いいことをやっている」と言って、たとえばその勉強会も残業の対象としてあげる。すると今まで自発的に勉強するという内発的動機付けだったのに、そのうちのたとえば半分ぐらいの動機が、いつの間にか残業代を得るためになってしまう。

 それだけ内発的動機付けは薄れているので、外発的動機付けに頼らないと、この勉強会は続かなくなってしまう。ところが残業代は変わらないし、それほど大きな額ではないだろうから、残業代だけではもう続かないようになってしまって、勉強会そのものがなくなってしまうということもあるのだ。

 社内の勉強会に報酬を払わないのは問題であるとの声もあるが、純粋に心理の問題とすると、必ずしも報酬という外発的動機付けを行うことがいいとも限らないのだ。

 若手の8割以上には、明らかに安定欲求がある。より詳細に論じるのであれば、安定というよりは、「失敗したくないという気持ち」が強いと思われる。今まで大きな失敗をしてきていないから、一度でも失敗したらおしまいだと思っている人が結構な割合でいる。

 そういう人はどうなるかと言うと、一流企業に入ろうとする。もちろん、就活には失敗があるのはわかっているので、記念受験も含めて身の丈、身の下、身の上、全部受ける。問題なのは入社後で、後は上がることではなく、放り出されないことだけを考えるのだ。

 この傾向が、実は勝負の世界であるはずのプロ野球にもある。プロ野球の二軍は所詮ファームであり、一軍で活躍して、初めてプロの野球選手としての記録も残るのだが、二軍でも追い出されない限りは結構な身分保証なので、何が何でも一軍に上がろうとは思わない選手も少なからず出てくるというのだ。

 これも立派なアンダーマイニング効果だ。二軍にいても十分に支払われる報酬やそれなりのレピュテーションなどが、内発的動機付けを減退させてしまったのだ。