「かんぽの宿」叩き売りの「出来レース」疑惑に始まった日本郵政騒動が、西川善文社長の続投を認める「出来レース」で幕を閉じようとしている。続投を拒んでいた鳩山邦夫氏に代わって総務大臣に登用された佐藤勉氏が22日、機能する見込みの乏しい経営諮問会議の新設などを盛り込んだ非公式段階の業務改善報告や生温い社内処分と引き換えに、錚々と西川続投に同意したからだ。
ちなみに、日本郵政が公式に業務改善報告を提出したのは、この2日後の24日のこと。露骨な続投容認姿勢に、国会では早くも麻生政権の西川氏再任責任を問う声があがっている。
鳥瞰すると、浮き上がってくるのは、小泉純一郎元首相ら上げ潮派が、4年前の郵政選挙で得た衆議院の3分の2議席という数の力を盾に、“お仲間”の西川社長の解任を阻む圧力をかけて、胆力・才覚に乏しい麻生太郎首相がこれに屈したという構図だ。
水面下で解任方針を撤回し、腹心の部下の鳩山前大臣に詰め腹まで切らせておきながら、「民間企業への介入には慎重であるべきだ」と取り繕おうとした首相の態度は、指導者として情けなった。
だが、国民から見て本当に残念なのは、民営化の美名の下で、「かんぽの宿」だけでなく、数々の出来レースや私物化、利益誘導が行われ、国民共通の資産が食い物にされたのではないかという疑惑が放置され、実態がほとんど解明されなかったことである。
民主、社民、国民新の3野党は今後も、国会で追及を続ける構えだが、野党だけでは、立法府の限界や衆議院での議席数不足の壁に当たる恐れがある。現状では、郵政民営化が政治史の汚点として記録される懸念だけが強まっている。
前大臣として、鳩山氏はよほど腹にすえかねているのだろう。23日午前、記者団から、佐藤新大臣が西川社長の続投にお墨付きを与えたことの感想を求められて、
「麻生太郎首相は致命的な判断ミスをされた。それがそのまま続いている」
と、憮然とした表情で語ったという。
対照的なのは、上げ潮派だ。菅義偉選挙対策本部副本部長は22日夜のニュース番組で、勝ち誇ったかのように
「続投は当然だ」と、コメントした。