機械録音から電気録音へ進化する時期

 CDの曲順は録音年代順ではないので、ここでは録音年代ごとに聴いてみよう。

 いちばん古い録音は機械式録音の、

9. カヴァレリア・ルスティカーナより(伊、マスカーニ作曲)」

 これは1911年に録音された。ここに収録されているのは1913年に日本コロムビア(日本蓄音器商会)が再発したSPなのだそうだ。テノールとの二重唱で、帝国劇場開場の年に上演されている。

連載第59回ではこう紹介した。「『カヴァレリア・ルスティカーナ』に柴田環(三浦環)とアドルフォ・サルコリー(テノール)出演。オリジナル女優劇のあいだにピエトロ・マスカーニのオペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』(1890初演)を抜粋して上演。環とサルコリーによる二重唱の録音が残っている」。これがその録音である。最初期の機械録音なのでノイズが多いが、歌は細部まで聴くことはできる。伴奏はオーケストラだとされているが、どう聴いてもピアノ伴奏だった。

 ドイツや英国を経て三浦環が米国へ移ったのは1915年で、2年後の1917年11月9日に米国コロムビアで4曲収録した。この時期も機械録音である。

 米国コロムビアに録音した4曲のうち、2曲が入っている。

20. ある晴れた日に(伊、プッチーニ作曲)
21. 可愛いがって下さいね(伊、プッチーニ作曲)

 オケの伴奏でイタリア語、21.はテノール((T・ケッティ)との二重唱である。

 冒頭に収録されている同じ「蝶々夫人」のアリア、

1. ある晴れた日に「蝶々夫人」(妹尾幸陽訳詞、プッチーニ作曲)
2. 操に死ぬるは (妹尾幸陽訳詞、プッチーニ作曲)

 1.は1932-44年に日本コロムビアが録音したもので、オケの伴奏、日本語詞によるもの。電気録音。音質も演奏の質も非常に高い。
 2.は1929-30年に日本ビクター蓄音器が録音・発売したもの。オケの伴奏、日本語。電気録音。やはり鮮明に聴こえる。

 日本ビクターのこの時期の電気録音ではほかに

7. 背戸の段畑(俗曲、フランケッティ編曲)
8. 君よ知るや南の国(堀内敬三訳詞、トーマ作曲)

 この2曲が収められている。

 時間が前後したが、三浦環は欧米滞在中の1922年に一時帰国し、日本コロムビアに25曲録音した。伴奏はピアノ。そのうちの1曲が収録されている。これらは機械録音時代の最後に当たる。

10. 埴生の宿(英、ペイン作詞、ビショップ作曲)

 オケの伴奏、英語の歌唱である。機械録音なので聴き取りにくい。

 ほかの収録曲はすべて日本コロムビアが1932年以降に電気録音したもので、音質は良好。ノイズもかなり除去されており、聴きやすい。全盛期を含む三浦環の声をはっきり聴くことができる。