バブル崩壊以降、
日本は人材育成に手を抜いてきた

「人は石垣、人は城」という言葉がある、これは武田信玄の考え方といわれるもので、勝利の礎を意味する、「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵」という言葉からきている。大事なのは城ではなく、人の力だ。

 しかしながら、現在の日本は、実は人材育成にかなり手を抜いている国だということもお伝えしておく必要があるだろう。

 たとえばOFF-JT(社外での研修などによる、技術や業務遂行能力トレーニングのこと)に投資している金額で言うと、OECD参加34ヵ国中、下から3番目というから驚く。日本より下にはポルトガルとスロベニアしかない。日本はそれだけOFF-JTに手を抜いている。言い方を変えると、他国はもっと真剣に人材に投資しているのだ。

 この話をすると、「いやいや、日本の人材育成はOJTだから」と言う人も少なくない。ところが、そのOJTが機能しているかというと、これも怪しい。

 確かに、1990年代の前半までは機能していたと言ってもいい。ただし、それも新入社員からミドルマネジャーに上がるまでに限られる話だ。しかも、バブルが弾けてからは、現場からは人が抜かれ、塩漬けも当たり前になってしまい、OJTがあまり機能しなくなってしまった。多くの会社で、OJTが形骸化しているのだ。

 OFF-JTにお金をかけず、頼みの綱のOJTもろくすっぽやっていないというのが今の日本の人材育成の現状なのだから、諸外国に負けるのも当然だ。

戦略を実行できる人間を育てる
目的から逆算して行うのが育成の基本

 大学までで学んだことで一生食っていけると思うのは、あまりに楽観的すぎる。どう考えても、何回も学び直しを繰り返して自分を磨き続けない限り、グローバルに戦うことなどできるはずがない。ましてや、大学で真剣に学んでこなかった学生が多いのだから、「何をか言わんや」だ。人材大国日本は、もはや幻影であるということを全員がしっかりと認識するところから我々はスタートするべきだと思う。

 では、これから心を入れ替えて、人材育成を真面目にやろうと思ったときに、何から手をつければよいのだろうか。そもそも人材育成は何のために行うのかを考えるところから始めるのがいいだろう。簡単な話だ。企業で行う人材育成は、人道主義的にやるべきものではない。極めて目的的にやるべきものだ。