最近増えつつある突発性難聴は蝸牛の疾患で、「感音難聴」です。症状としては、ある日突然、片側の耳が聞こえなくなる、聞こえづらくなる病気です。両耳が聞こえなくなる方は極めて稀です。多くの人は朝目覚めた時耳鳴りがしたり、電話に出た時、テレビを見ていた時に気づきます。50%くらいの方は、めまいや吐き気、耳鳴りを伴います。めまいの程度が強いほど、難聴の程度が重症で、高度の難聴の可能性もあります。また、軽症の場合、全く聞こえないわけではないので、“おかしい”と気づくことが大事です。反対側の耳をふさいで聞いてみると違いが分かります。

――突発性難聴の原因は?

 突発性難聴の原因は、大きく分けるとウイルス感染、循環障害等が考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。ウイルス感染ではっきりわかっているのは、おたふく風邪として知られる頬部(耳下腺)がはれる時に起こる難聴(ムンプス難聴)だけです。

――突然、片側の耳が聞こえなくなったらどうすればよいですか?

 “おかしい”と思ったら、すぐその足で耳鼻咽喉科を受診すべきです。そのうち良くなるだろうと放置しておくのは問題です。なぜなら、突発性難聴は、救急対応が必要な一刻を争う病気だからです。私は、突発性難聴を「内耳の狭心症」と呼んでいます。狭心症は放置して心筋梗塞になると治りません。しかし、狭心症のうちに治療をはじめれば治る可能性もある病気だからです。

 突発性難聴の治せる期間は限られていて、ひと月を過ぎますと、ほとんど治りません。治療は早ければ早いほど聴力が改善する確率は高くなります。ひと月以内に治療をはじめた人を統計でみると、約3分の1は完治し、3分の1はある程度回復するが難聴を残し、3分の1は治りません。勝負は発症から1週間以内に決定するといっても過言ではないでしょう。さらに、突発性難聴は、一度しかかかりません。一度治療で治れば、二度と発症することはきわめて稀ですが、治らなければ難聴や耳鳴りが後遺症となります。

――突発性難聴の診断はどのように行うのですか?

 急に聞こえなくなったものがすべて突発性難聴ではありせん。耳垢が詰まっていたり、中耳炎でも、耳が聞こえなくなることもあります。ですから、突発性難聴の疑われる患者さんが来ると、まず中耳炎や鼓膜に異常がないことを確認します。

 次に、「伝音難聴」か「感音難聴」を鑑別していく必要があります。それには、純音聴力検査という聴力の検査を行い、気導と骨導を調べます。検査の結果、「伝音難聴」が否定され、「感音難聴」とわかったら、聞こえなくなった日時がはっきりしているかどうかを伺います。これは突然聞こえなくなったのかどうかを確認するためです。さらに、服用している薬、過去の既往歴として高血圧や糖尿病の有無やおたふく風邪の人が周りにいなかったかなどを確認します。

 この聴力検査の結果と症状から聞いただけではまだ突発性難聴と確定できません。しかし、初診時突発性難聴の可能性を疑われる場合、暫定的に突発性難聴として治療をはじめます。突発性難聴は、時間が勝負なので、すぐに治療を開始します。同時に「感音難聴」のなかで、突発性難聴と症状が似ている疾患を否定していく作業を行います。