社会に不満を抱えるローンウルフの犯行というのが定説になりつつある一方、犯行の動機については依然はっきりとしないままだ。シャルリ・エブドはイスラム教徒を刺激する風刺画をこれまで何度も掲載し、過去には編集部に火炎瓶が投げられる事件も発生している。クアシ兄弟はシャルリ・エブドに恨みを抱いて編集部を襲撃したとされるが、編集部でクアシ兄弟に銃を突き付けられながら、結局撃たれなかったスタッフもおり、無差別銃撃だったのかどうかもはっきりしない。また、クアシ兄弟と親交のあったクリバリ容疑者がなぜ9日にユダヤ系スーパーマーケットを襲撃したのか、スーパー襲撃とシャルリ・エブド編集部襲撃に何らかの関連性が存在したのかについても不明だ。

世界中に広がった「私はシャルリ」
その一方で「私はクアシ」という言葉を支持する声も

 シャルリ・エブド襲撃事件から間もなくして、ツイッター上に「私はシャルリ」というフランス語のハッシュタグが誕生し、やがてプラカードまで作られるようになった。「私はシャルリ」という言葉は事件が発生した7日の夕方までにツィッター上で300万回以上使われ、ツイッターで短期間のうちに使われた言葉としては記録的なものとなった。

 テロに対する怒りや、表現の自由を尊重すべきという声。「私はシャルリ」というスローガンを掲げる人の思いは様々だが、市民だけではなく、パリにあるアメリカ大使館や他の行政機関・団体もツイッターのプロフィール写真を「私はシャルリ」のプラカード写真に変更している。異文化に対する寛容性やテロに屈しない姿勢の象徴として、「私はシャルリ」という言葉が世界的なムーブメントへと変貌したのだ。

「私はシャルリ」というスローガンがツイッターを含むSNSで多用される一方で、「私はクアシ」というシャルリ・エブド襲撃事件の容疑者を称えるスローガンも、ツイッター上で少なくも2000回以上使われていた事実も紹介しておきたい。

 フランス革命後に共和国の標語として作られた「自由、平等、博愛」は、現代フランスを表す言葉として世界的に知られているが、この標語を信じることのできないマイノリティが存在するのも事実だ。英紙テレグラフは11日、パリ郊外のアルジェリア系コミュニティの様子を報じ、取材に答えた若者の多くはクアシ兄弟の行動を支持していた。同じエリアで教師として働く女性は、シャルリ・エブド襲撃事件の翌日にクラスで黙とうの時間を設けた際に、数名の生徒が黙とうを拒否したトラブルを紹介し、「こういったケースは他の学校でもあったと思う」と語っている。

 フランスのカズヌーブ内相は12日、フランス国内に約700あるユダヤ人学校の警備を強化するために、警察と治安部隊から約5000人を投入すると発表した。別に5000人が観光名所など多くの人が集まる場所の警備に投入される予定で、1万人を動員して国内の警備を強化する。フランス国内のテロに対する警戒は、しばらく強い緊張状態が続きそうだ。

 シャルリ・エブドは14日に最新号を発売すると発表。フランスの大手新聞などが印刷や資金のサポートを行い、事件前は6万部程度だった発行部数は300万部にまで拡大。最新号の表紙には預言者ムハマンドが「私はシャルリ」と書かれたプラカードを掲げたイラストが使われるのだという。