冬季加算に対しては、2015年度予算では30億円の引き下げが行われる。この根拠は、基準部会報告書の、

「2人以上の低所得世帯における冬季の光熱費増加支出額と冬季加算額を比較した場合、現行の冬季加算の地区区分では、I区を含む大部分の地区において、低所得世帯における光熱費増加支出額が冬季加算額を下回っていた」(報告書30ページ)

 に基づく、と考えられている。確かに、下記のグラフを見る限り、概ね、一般低所得世帯での冬季の寒冷による光熱費増加を冬季加算が上回っている。より高い所得階層との比較もあるが、この傾向は変わらない。

生活保護は切り捨てる? 2015年度予算案世帯人員による冬季の光熱費増加と冬季加算を比較したグラフ(第20回基準部会資料より)。2人世帯・6人以上の世帯を除き、現状の冬季加算は高すぎるかのように見えるけれども、どのような計算によっているのかに注意する必要がありそうだ。
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生活保護は切り捨てる? 2015年度予算案基準部会報告書45ページの表から作成した、2人以上世帯における所得階層別の冬季の月当たり光熱費増加を、同等の世帯構成に対する冬季加算額(第20回基準部会資料・12ページ)と比較したグラフ(筆者作成)。横軸は地域区分。直感的に「消費実態の方に、地域による差がなさすぎる」などの違和感を覚える。なお、地域区分については下記の地域区分の表を参照
生活保護は切り捨てる? 2015年度予算案現在の生活保護制度では、冬季の気候によって地域区分が行われている。しかし、たとえば北海道の中での冬季の寒冷の状況・積雪の状況の違いや、岩手県内での沿岸部と山間部での冬季の問題の違い(強風か、積雪か)は反映されていない

 数多くの生活保護世帯の暮らしぶりを実際に見ている筆者から見ると、この原因は極めて明らかだ。生活保護世帯の住居は概ね「安い・古い・不便」の全てを満たしている。建物自体の断熱性能も強度も、「快適」「安全」には程遠く、破損箇所があることも少なくない。このため、問題の少ない住居に暮らしている世帯に比べて、より多くの光熱費を必要とするのは当然であろう。

 生活保護世帯の住居の劣悪さは、基準部会報告書にも掲載されている。

生活保護は切り捨てる? 2015年度予算案民営賃貸住宅を利用している生活保護世帯の場合、世帯人員によらず、面積・設備とも国交省の「最低居住面積水準」の達成率は一般世帯に比べて劣ることが明確になった(基準部会報告書より)
生活保護は切り捨てる? 2015年度予算案災害時等に避難経路が確保されているといえる、幅4メートル以上の道路に接した住居に居住しているのは、生活保護世帯のうち38.0%。一般世帯では58.3%
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 さらに、「冬季とはいつからいつまでを指すのか?」という問題もある。現在の冬季加算は、11月~翌年3月に支給されているが、寒冷により光熱費の増大する時期は地域によって異なる。また、「3月の暖房費は4月に請求され5月に支払われる」といった「カレンダー要因」の問題もある。これらの問題について、議論はされかけたが結論には至っていないまま、報告書は取りまとめられている。

生活保護は切り捨てる? 2015年度予算案生活保護世帯の13.8%は、腐朽・破損のある住居に住んでいる。パーセンテージでいえば一般世帯の11.3%と「大差ない」とも言えるが、民営賃貸住宅のみの統計であることに注意が必要。生活保護世帯で自家の保有を認められている場合、補修費用が十分でないため、さらに住宅の状況は劣悪となる場合が多い
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 なお、生活保護世帯の光熱費の高さが、生活保護世帯の住環境の劣悪さと関連している問題については、本連載第86回でレポートした第20回基準部会で、委員の園田眞理子氏(明治大学教授・建築学)より、

「(筆者注:生活保護世帯の最初の住宅の質は保障されているわけではなく、断熱性も低いことが多いため)初期値の状態が良い状態をキープされていないのを、月々のお金で辻褄を合わせる構造になっています。『そもそも』が良くないと、月々の追い銭、フローが大きくなります。そういう関係にあることを前提において、どうするか議論する必要があるのでは?」(筆者のメモによる)

 という指摘があった。