田村 最近、日本でも大変ヒットした『Zero to One』(ピーター・ティール著、NHK出版)という本でもリーンスタートアップが批判されていますが、高萩さんはご自身でリーンスタートアップを体得して活用されたんですよね。その基本的手法である、実用最小限の機能をもった製品MVP(Minimam Viable Product)をつくられたわけですが、ビルさんの手法ではコンセプトがしっかり固まるギリギリまで試作はしない、という点で大きな違いがあります。高萩さんが特徴的なMVPを作ったときは、どういうプロセスだったんですか。

高萩 私たちの場合は、ハッカソンで先にモノを作ってしまったあと、MVPを作り出すまで2ヵ月ぐらい時間がかかりました。ハッカソンで一度作ってみて、お客さんが望んでいないものを作るのが一番ムダであるということを学んだので、確信がもてるまで次は作らないと決めていました。その代わり、確信ができたら作るということにしたので、結果的にプロトタイプを作らなかったことは事実です。

田村 では奇しくもビルが説明した24ステップに近いかたちで開発していったんですね。

高萩 そうですね。僕も作るほうが楽しいし、作れないことは苦痛だったんですけど、それは我慢して、確信がもてるまで作らなかった。結果として、うまくいったと思います。

※本イベントは2014年12月15日に開催しました。このパネル・ディスカッションの続きとなる後編は次回公開します。