田村 「結婚したくなるような人」という話が出ましたが、劉さんは具体的にどこで仲間と出会ったんですか?
劉 MITマーティン・トラスト・アントレプレナーシップ・センターでは公式なイベント以外にも、「チーム・フォー・ゼロ」(今がスタート地点だ)とうたって、各学期の始めに学部の壁を乗り越えた様々なイベントを主催するんですね。そこでは、私のようなビジネスパーソンとエンジニアを惹きつけるようなイベントが多数開催されます。
それから各学生が面白い起業家に出会ったときに、MITで話してくれないか、と連れてきて人を集めて開くプライベートなセミナーもかなり多いんです。MIT内だけでなく起業に関心のある人が集う場としてマーティン・トラスト・センターがあり、ボストンのエコシステムになっているので、マーケティングやセールスなど多様な人材につながっているところが魅力です。
チームの方針が文化として根づく場合も…
田村 ボストン全体から多様なタイプの人が見つかるんですね。
高萩さんが今の事業をスタートしたのは、大阪のハッカソン(2013年1月開催の「第1回ものアプリハッカソン」)がきっかけでしたよね。このセミナー開催直前の打合せで、ビルから「君はいつまでこの国でやってるんだ、もっとファーストスピードでやらないのか」という話も出ていましたが(笑)。
高萩 そうでした(笑)。チームの出会いはそのハッカソンだったんですが、イベントが終わったあとリーンスタートアップの手法に則って、本当にこの製品が想定していた課題があるのかどうか、40家族に対してインタビューしたんですね。その結果、想定していた課題がないことがわかって、新しく課題を探して今の製品をつくりました。
開発者の方にはある程度共感して頂けると思うんですけど、自分が1回作ったものを捨てる行為って結構難しい。私たちのチームメンバーでよかったのは、ニーズがないと分かった瞬間に、あっさり製品を捨てられたことです。チームメンバーの間で、リーンスタートアップ方式でインタビューしてニーズが見つからなかったら絶対に捨てるという合意があったからです。その判断をするためにも、インタビューするときは必ず、誰が見てもわかるよう客観的かつ定性的・定量的に詳細なレポートを書くことにしていました。いったん作った製品を捨てたときだけでなく、新しく始めようとしたときにみんながひとつの方向に行けたのは、それがチームの方針、文化としてある程度根づいていたからだと思います。