そもそも、ISにとっては、英米のほうが日本以上に許せない「敵」である。だが、英米人に対して、世界中でテロが頻発しているというわけではない。前述の通り、空爆によるダメージや資金力の悪化で、ISが本当に世界中でテロを起こす力を残しているかどうか自体、疑問なのだ。

 日本は事態を冷静に受け止めるべきだ。日本は確かにISから「敵」とみなされることになった。だが、それは日本人も、諸外国並みの危機管理を考えなければならなくなったというだけのことだ。むしろ、政府が身代金、女死刑囚の解放に応じず、ISに「日本はキャッシュディスペンサーだ」と思わせなかったことは、日本人が今後テロに遭うリスクを、難しい状況の中で最小化できたと考えるべきではないだろうか。

 今後、日本政府は国内でテロを未然に防げるよう情報収集力、分析力の強化、海外に渡航・滞在する邦人への迅速な情報提供など、対テロ対策を強化することになるだろう。それは、悪いことではない。前述のように、従来日本政府は国民の生命・安全の保護に関心が薄すぎたように思う。政府が緊張感をもって、それが改善されていくならば、今回のような不幸な事件が起きた中で、せめてもの幸いなのかもしれない。

日本は「違い」ではなく「同じところ」を
強調して中東外交、援助を続けるべき

 今回の不幸な事件を考える際、忘れてはならないことがある。それは、ISの台頭は、石油を巡る欧米の中東進出の歴史の延長線上にあるということである。

 18世紀末、英国の進出によるペルシャ(現イラン)でのアングロ・ペルシャ石油(現BP)の設立に始まる石油を巡る欧米の中東進出。第一次世界大戦当時の英国が「東アラブ人にアラブの独立国を作る」(マクマフォン書簡)、「パレスチナにユダヤ人国家を建設する」(バルフォア宣言)、「トルコ支配地区を英国とフランスで分け合う」(サイクス・ピコ協定)という3つの異なる約束をした、いわゆる「三枚舌外交」。その結果である、欧米石油メジャー(セブン・シスターズ)による中東の石油利権支配の完成、欧米によって人工的に引かれた国境線によるアラブ人国家の成立、そしてユダヤ人国家・イスラエルの誕生だ。

 もちろん、中東諸国は一方的に欧米支配に甘んじてきたわけではない。第二次世界大戦後、石油産業を国営化し、OPEC(石油輸出国機構)を結成して、エネルギーの欧米支配からの独立を果たした。中東の多くの国は欧米のメジャーとともにエネルギー国際市場を形成し、国民はオイルマネーで潤っている。だが、その一方で、その恩恵を受けられない貧困層との格差が広がった。貧困層は、欧米を「異教徒」と敵視する「イスラム過激派」の土壌となった。