回るフランス料理も登場

 料理はフランスそのままに、日本独自のプレゼンテーションを取り入れるレストランも増えてきた。その1つが、回転ずしの「回転」スタイルと南仏料理を合わせた店「Medi Terra Nea(メディ・テラ・ネ)」だ(補足すると、パリにおいて回転ずしは珍しい存在ではない。例えば上述のPlanet Sushiも回転ずしを運営している)。

 フランス料理を回したら、せっかくの料理が冷めてしまうのではないかと思う人も多いだろう。しかし実際、店内のコンベアに乗るのは、サラダ、カルパッチョ、冷製スープなど、元から冷めた状態で出される前菜に相当する品々だ。主菜の温かい料理は、店員に個別注文する。温かい料理も、オープンキッチンで調理されるため、コンベア同様、見た目にも楽しめる。

前菜が回るメディ・テラ・ネ

 なぜ、フランス料理と回転ずしを結びつけることになったのか。同店のオーナーに聞いたところ、両者には共通点があるという。フランス料理とは、プレートが順にテーブルに運ばれ、それを一皿ずつ食べていくスタイルである。回転ずしも、一皿ずつ順番に食す形式だ。それならフランス料理も、その一皿一皿を回転させてしまえばいいのではないか、という考えに至ったそうだ。

 中華系も負けてはいない。「回転」スタイルと、しゃぶしゃぶを合わせた「Shabu Sha(シャブ・シャ)」というレストランは、その一例だ。店名は日本語の「しゃぶしゃぶ」から取っているが、鍋は中国の火鍋のようなものを使う。コンベアを取り囲む各テーブルには一人用の鍋が備えてあり、回る野菜や肉、魚、インスタント麺を取り、お好みに茹でて食べる。その自ら調理するということが受けている。

スタイリッシュな回転しゃぶしゃぶ

 Shabu Shaによれば、同店のコンセプトは日本からインスピレーションを受けているものの、タイ、ベトナム、中国など他のアジア諸国の色も入る。特に同店オーナーの世代であるパリの華僑3世は、それらまだフランスで知られていないアジアのコンセプトを、発展させようとしているという。

 各フランスの回転レストランに共通するのが、スタイリッシュで近未来的な雰囲気であるということ。それが流行に敏感な若者を引きつける。価格を考えず日本をそのまま再現できる高級店なら別だが、大衆向けの場合、日本と同じものを求めようとすれば、コスト上、難しい。ピンポイントに層を絞るのではなく、味覚もフランスで万人受けするよう対応していかねばならない。日仏の文化的差異を埋める方策が、結果的にフランスで新しい日本料理を生み出す力になっている。

 では、このようにアレンジされつつ広がるフランスの日本食マーケットに、日本の店や企業が入り込む余地はないのだろうか? 現場は常に感覚鋭い現地資本によって引っ張られていくのだろうか? じつはそこで売上を伸ばす日系資本もあった。

(次回へ)