今の失業率3.6%は
果たして完全雇用か否か
春闘がまもなく本格化する中で、賃金動向への注目が高まっている。賃金はいつから上がるのかという素朴な疑問は、経済学の観点からいえば、今の雇用状況が完全雇用かどうかと密接に関係している。
一般論からいえば、完全雇用に近づくと、賃金が急に上がりだす。完全雇用になれば、賃金とともに物価も急に上がりだす。そして完全雇用の状況では産出額は増加せず、賃金・物価のみが上がり、実質賃金は上がらない。
今の失業率は3.6%(1月)であるが、果たして今が完全雇用なのか、そうでない場合、完全雇用になるのはどの程度の失業率なのか。これらについて、筆者の見解を述べたい。
ただし、失業問題についてマクロ経済の観点からの見解である。個々の業種、企業をみると、実にミスマッチが多い。このため、マクロ経済から見て完全雇用としても、個々の業種・企業というミクロの立場からみれば、違う光景になることもしばしばである。そうしたミクロ的なミスマッチが不可避であると思われる失業率を、マクロの視点からみているだけである。
ちなみに、全体の有効求人倍率(常用[含むパート])は昨年9月からやっと1を超える状態になったが、個々の職業でみれば1より下の水準のものもまだ少なくない(下図)。なお、地域によって格差もある。これらのミスマッチを解消するのは、重要な政策であるが、ここでは立ち入らない。