金融の基本を見失った証券化によって、米系金融機関はサブプライム問題で手痛い目に遭った。この反省から、米金融当局は「カバードボンド」導入を検討している。もし実現すれば、米系銀行は再び巨額の資本不足に追い込まれ、大混乱に陥るのは必至だ。日本では知られていないカバードボンド問題の深層に迫った。
2008年3月までに、世界の主要金融機関は巨額のサブプライム関連損失を計上した
これによれば、円換算で累計1兆円以上の損失を出した金融機関は、米国のシティグループ、スイスのUBSなど9社もある。日本の金融機関は比較的「軽傷」だったが、それでも、損失総額はみずほフィナンシャルグループの6450億円を含めて合計1兆8000億円強に上る。
国際展開する商業銀行に関しては、「バーゼル協定」により、最低8%の自己資本比率維持を要求されている。サブプライム関連損失によって自己資本をすり減らした欧米金融機関はこぞって増資に走った。たとえばシティグループは、中東系のSWF(政府系ファンド)の出資を仰いだ。
それでもなお、自己資本は十分とはいえない不安定な状況にある。
第一に、サブプライム関連損失の底が見えない。後述する証券化の魔術によって、そもそもサブプライム関連資産がいかほどあるかさえ確認できない体たらくなのである。
第二に、米国の金融当局が「カバードボンド」と呼ばれる新手法――これも後述するように、欧州では一般的な手法なのだが――の導入を検討していると見られる。日本ではほとんど知られていない動きだが、このカバードボンドが米国でも導入されると、米系銀行は再び巨額の自己資本不足に陥る公算が大きい。