中期経営計画の最終年度である2014年度の決算を前に、目標の連結経常利益1200億円を超えた大和証券グループ本社。一見、順調だが、足元にはほころびも出始めている。

「三井住友銀行系のSMBC日興証券がいる手前、大和証券の主幹事の比率を下げざるを得なかった」

 メインバンクが三井住友銀である上場企業の関係者はこう声を潜める。上場企業が株式や社債などの募集や売り出しをする場合、証券会社がその業務を代わりに引き受けて手数料を得る。これを幹事業務といい、その取りまとめ役は「主幹事」と呼ばれる。最も実入りの大きいその座をめぐり、証券会社は激しい争奪戦を繰り広げている。

 だが、冒頭のように大和証券グループ本社はその座を銀行系証券に追われ始めている。大和からすれば三井住友銀は、2009年の提携解消まで約10年間連れ添った元パートナー。メガバンクの看板を盾に営業攻勢をかけているとあって、「三井住友銀側に寝返るのも、1社や2社で収まるレベルではない」(関係者)というから、担当である法人部門の課題は深刻だ。

 とはいえ、この問題は表から見えにくくなっている。業績が好調だからだ。

 そもそも14年度は大和にとって中期経営計画の仕上げの年だが、目標の連結経常利益1200億円をすでにクリアしている。

 それも国内の支店を中心とした個人向け営業部門が業績をけん引したからだ。もともと預かり資産は52.9兆円(14年末)と、野村證券に次ぐ国内2位の独立系証券会社。その強みを生かして、顧客の資産運用を強化し、業績を伸ばしてきた。11年にスタートした大和ネクスト銀行の早期黒字化も利益を押し上げた。

 一方で海外部門を大幅に縮小したことも奏功した。大和は07年ごろから「アジア関連収益1000億円」とぶち上げて大規模な事業展開を図ったが、あえなく失敗。海外部門は赤字に沈み、13年度までの4年間にわたり、計630億円を超える経常損失を垂れ流してきた。