「本気になった野村には、やはりかなわない」。業界2位の大和証券の内部からは、このような悲しみとも諦めともつかない声が漏れている。

国内営業で急成長中のファンドラップ口座をめぐり火花を散らす大和証券と野村證券
Photo by Takeshi Kojima

 それも無理はないだろう。大和が国内営業においてシェアトップを誇る、ある“牙城”が野村證券によって突き崩されようとしているからだ。それが国内のファンドラップ口座の資産残高である。

 ラップ口座とは、個人投資家が証券会社などと投資一任契約を結んで、自身の資産運用や管理を専門家に任せるサービスだ。約40年前に米国で生まれ、資産を大切に包むようにするということから「ラップ」と名付けられた。日本でも2004年に証券取引法等の改正によって解禁された。

 当初は富裕層相手のサービスであったが、300万円程度の残高でスタートできるようになった。インフレ懸念が高まる中、リスクの取り方に応じた資産配分を選ぶことができるとあって、投資初心者や定年退職者に受けて、裾野が広がっている。

 日本投資顧問業協会のまとめによれば、ラップ口座の資産残高は14年6月時点で1.6兆円規模だが、本誌推計では14年9月時点で2.2兆円となりそうで、3カ月で35%も成長している。

 そのトップを守り続けてきたのが大和である。資産残高は、9月末時点で7636億円とシェアは35%前後の見込みだ。しかし、これを猛追しているのが業界の雄、野村である。