以前は家電メーカーが特設テントを繁華街の家電量販店に置くことで地元民への認知度を上げていた

 特に冬場、PM2.5が濃く漂う中国の都市部では、人々は休日や仕事後にショッピングセンターに足を運び、スマートフォン片手に時間を潰す。ショッピングセンターは中国の一般大衆の動線において大きな部分を占めているのだ。

 スマートフォンの普及以前は、地元民に人気のショッピングセンターを中心としたバス停や地下鉄駅、公共交通内のテレビなど、人々の動線上に広告を出すことで大きな効果が期待できた。広告スペースや公共交通用テレビの広告枠でPRするだけでなく、歩行者天国に特設テントを設けて、そこで特別価格での販売会を行うのも大きな意味があった。

 しかし今ではショッピングセンターの建設ラッシュや、センター内の新店舗登場以上に、スマートフォンの画面が人々の視線を独占し、その先にあるインターネットこそが消費者に「何かあるだろう」というワクワク感を与えてくれる場所となっている。

中国版家電エコポイント時代は
低価格キャンペーンから口コミを期待

 みなさんは日本の「家電エコポイント」を覚えているだろうか。中国でも、かつて都市部でのテレビの買い換えを促進するために対象機種購入で補助金がもらえる「以旧換新」と、農村部での1台目のテレビ購入を促進すべく対象機種購入で補助金がもらえる「家電下郷」というキャンペーンが国策として打ち出された。これらはリーマンショック後の中国経済復活に貢献するという点で大きな意味があったが、ここではキャンペーンが中国メーカー製テレビ普及の、大きなきっかけとなったことにフォーカスを当てたい。

 以旧換新自体にはそれなりの効果があったが、創維(スカイワース)などの中国地場のテレビメーカーは、「以旧換新」の号令を勝手に利用し、テレビメーカー独自の「以旧換新キャンペーン」を、街の歩行者天国など目立つところで毎週末のように行った。誰もが中国メーカーの名前とその液晶テレビを知り、一部の人々は低価格キャンペーンでテレビを購入した。すると購入者から中国メーカーのテレビは安価で壊れないことが口コミで伝わり、それがだんだんと広がっていった。これまで中国では、買ったばかりの国産品がすぐ壊れるのは「よくあること」だった。つまり誰も使っていないものを買うのはリスキーなのだ。

 日本メーカーも1年くらい遅れて、街でキャンペーンを行うのを見るようになった。だが、規模は小さく、どこか本気度が足りないキャンペーンだった。