ご存じのように、日本のビール類は酒税法が定める麦芽等の比率、原料や製法の違いなどにより、ビール、発泡酒、新ジャンルに分けられ、その課税率に従って価格帯が異なる。ここでポイントとなるのは、機能性ビール類が低価格帯である発泡酒、新ジャンルでその市場を拡大してきたということだ。

「オフ系」は
低価格商品のイメージが強い

 日本のビール類市場の出荷量自体は微減傾向にあり、決して順風満帆とは言えない。その中で最も有望視されているのが機能性市場だ。2000年代初頭、低価格帯の発泡酒のジャンルで糖質オフ商品が発売されたのを機にシェアを伸ばし続け、2014年の家庭用ビール類市場に占める機能性商品の割合は今や19%(アサヒビール調査)。ビール類5本に対し、1本は機能性商品が占める計算だ。さらに昨年夏には大手ビール4社から、プリン体ゼロを謳う発泡酒が登場。あらたな機能性バトルとして話題を呼び、機能性市場全体の底上げにもつながる結果となった。

 では、これらの機能性商品が発泡酒や新ジャンルに集中したのはなぜか? 山口さんは「使用できる原料に制限があり、原料の3分の2以上の麦芽使用率が義務付けられているビールに比べ、麦芽以外の副原料の使用率が高く、原料に制限の少ない発泡酒や新ジャンルのほうが、糖質の削減がしやすい」という。メーカーサイドの技術的な取り組みやすさ(それでも難しいのだが)、さらには消費者の節約志向や健康ブームも加わり、機能性ビール類はいわば一大ブームとなる。「機能性ビール類=低価格帯の発泡酒、新ジャンル」という構図が定着した背景にはこうした日本の市場ならではの特性があったのだ。

 そこにあえてビールで勝負を挑む。技術的なハードルに加え、価格力でも明らかに形勢不利だ。元々安く手に入った機能性商品を、高価格帯のビールで飲みたいと思わせる。それにはターゲットの絞り込みとわかりやすいスペック、訴求ポイントが必須となる。「難しい市場に切り込むことになる。それは最初からわかっていました」と寺門さんは言う。「けれど、難しいとわかっていても、そこにお客様がいるならチャレンジしたい。そう考えたのです」。

 寺門さんは、以前から「ビールしか飲まない」という層に注目していたという。「とくに40~50代ぐらいから上の方々は、発泡酒が当たり前のように身の回りにあった20~30代の層に比べ、ビールに長年親しんできた分、その味にこだわりを持つ方が多いんです」(寺門さん)。一度は発泡酒や新ジャンルに手を伸ばしたものの、やはり「ビールが飲みたい」とビール回帰をする率が高いのもこの年代層だという。

 しかし、体型や体重維持といった「外見」だけでなく、よりシビアに健康診断の数値が気になってくるのも40~50代ぐらいからだ。予防医学推進の流れを受け、いわゆるメタボ検診(特定健康診査)も各自治体などで導入され、健康への関心は年々高まりを見せている。ビールユーザーとて、決して健康に無関心でいられるわけはなく、「頭では身体のことを気にしつつ、ビールの味に関しては譲れない」。そういう層が一定数いるはずだと寺門さんはにらんだのだ。