A社の株主が、B社の株式に固定されている資産に関して、その合理性を説明せよ、と要求するのは当然だ。合理性の説明というからには、リスクとリターンについて説明しなければならない。

 資金を自社株買いに回すよりも、他社の株式の保有の方が魅力的なのだ、と説明されると、株主は変な気分になるだろう。だが、リスク、リターンの面から考えて保有が合理的だというのは、おおむねそうした話になる。

 もう一つ付け加えるなら、投資家の立場では、B社の株式がリスク、リターンの面から考えて魅力的な投資対象なのだとすると、投資家自身がB社の株式を買えばいい。A社のビジネスに投資したいと思ってA社の株式を買ったら、その成分のうちの何%かはB社の株式、つまりB社のビジネスだという「強制的セット販売」は、迷惑とまで決めつけないが、不便ないし余計な状況なのだ。

原案の目の付けどころは正しい
成長戦略の一助となり得る

 本音ベースでもっとありそうな言い訳は、「B社は当社にとって重要な取引先であり、B社の株式を保有することは、当社にとって十分な利益をもたらしている」というものだろう。株主総会でついそう答えてしまう社長がいるかもしれない。

 しかし、株式を保有することから生まれる利益というのは、その出所を考えると、厄介な存在だ。

 A社がB社の株式を保有することで、A社との取引にあって、B社が市場で形成される条件よりも有利な条件をA社に与えるのでなければ、「株式保有による利益」がもたらされていないことになる。だが、そうした利益は、もしもそれが存在するとすれば、B社の利益が不当な取引条件によって損なわれていることを意味する。

 仮にB社がA社に提供する利益(B社にとっては損失)がB社の資本のコストに見合う、といった際どい経済合理性が、B社の側で認められるとした場合でも、取引の内容によっては、A社の優遇・B社の損失は、取引慣行や法制上、「不公正な条件」である可能性もあるだろう。流行の言葉でいうと「コンプライアンス違反」だ。

 また、A社とB社がお互いに株式を持ち合っている場合、さらには他の上場会社も含めて株式を持ち合っている場合、各社の経営陣が結託すると、安定した多数株主を確保し合うことにより、外部の一般株主の意向に関係なく、自分達の意向だけで会社をコントロールできるようになる。