3月13日、政府は労働者派遣法の改正案を閣議決定した。改正案の柱は、3年ごとに人を入れ替えれば企業が派遣社員を使い続けられたり、例外的に期間制限のなかった「専門26業務(秘書や通訳など)」を廃止したりする、というものだ。

 派遣の身分が固定化する、との野党批判に配慮して、悪徳業者の温床となっている届け出制を廃止したり、均衡待遇を強化したりするなど修正が加えられた。

 実はこの法案は、条文のミスや与党閣僚の不祥事により、過去に2度も廃案になった経緯がある。にもかかわらず、3度目も危うく“自爆”するリスクがあった。

 1月27日の日本人材派遣協会賀詞交換会で、厚生労働省で派遣法を所管する担当課長が「これまで派遣労働は使い捨てだった。モノ扱いだったのが、ようやく人間扱いする法案になった」と、発言したのだ。

 派遣法の成果を強調したかったにせよ、“モノ扱い”はいけなかった。民主党の山井和則議員ら野党が強く反発。規制強化のメニューが多い割に成立を見ないことから、与党議員からは“呪われた法案”とやゆされている。

 しかし、今回ばかりは政府・厚労省には「三度目の正直」で9月施行を急がねばならぬ理由がある。というのも10月から、違法派遣と知りながら派遣社員を受け入れている場合は労働契約の申し込みをしたと見なす、「労働契約申し込みみなし制度」がスタートするからだ。定義が曖昧な「専門26業務」が温存されたまま10月に突入すると、違法派遣と判断できずに現場が混乱してしまう。