運用に関する非常識をさらす
GPIFの「投資原則」
公的年金積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、3月26日に「年金積立金管理運用独立行政法人の投資原則」(以下「投資原則」)と「年金積立金管理運用独立行政法人の行動規範」(以下「行動規範」)を発表した。
どちらも基本的な原則を大まかに述べたもので、わざわざ今出すことに何の意味があるのか考え込んでしまうような文書だ。
これらを、なぜ今発表したのか事情は聞いていないが、塩崎恭久厚労大臣がGPIFのガバナンスを問題視していると伝えられており、これに対して、厚労省・GPIFサイドとして、「ガバナンスに関しても取り組んでいますよ」というアリバイ作りをしているかのように思える。もっともこれは筆者の推測に過ぎない。塩崎大臣対年金官僚のGPIFの組織をめぐる争いについては、官僚側の粘り勝ちを予想するが、さてどうなるだろうか。
ところが、こうした一見つまらない文書でも、読んでみると見過ごせない箇所が見つかる場合がある。
特に、投資原則の方は、本稿で分かりやすく図解してご説明しようと思うが、公的年金運用のあり方の根本的な問題点を明示している点で見過ごせない。
率直なところ「雉も鳴かずば撃たれまい」と思うのだが、運用に関する非常識を丸出しにさらしているので、見過ごすわけにはいかない。もちろん、個人投資家は、決してGPIFのやり方を真似しない方がいい(無難なやり方は後で説明する)。
なお、行動規範の方は、具体的な規則が書き込まれていない点で、どうということはないものだが、よく読むと、GPIFの役員、職員、運用委員などは、本規範の厳格な適用を恐れるなら、親族も含めて株式投資などできまいと思う(本人と同居の家族は仕方がないが、範囲を限定していない点はキツい)。果たしてその通りになっているのかが少々心配だ。この種のものは、一見緩く見えて、後からの適用の仕方によって怖いものになるので、関係者は要注意だ。