日本の死亡者数は戦後から1980年代半ばまで、毎年おおむね70万人前後で推移してきました。それが1985年には75万人、90年に82万人、95年に92万人、2000年に96万人と急激に増え、2005年には108万人となり、ついに出生者数を追い越してしまった。つまり、超高齢化した「人口の塊」が一気に減っていることが、人口減少の原因です。

 逆に言えば、戦争や疫病などの社会的事件によって若い世代が亡くなっているわけではないので、ある意味それほど深刻な人口減少ではないと言えます。

 ちなみに、よく問題視される地方の人口減少も、「東京に若者がどんどん出て行ってしまうため」と語られがちですが、実は地方に大量にいる高齢者が次々と亡くなっている影響のほうが、よほど大きいのです。となると、現在の地方の人口減少は果たして問題なのかどうか、冷静な検証が必要でしょう。

これまでは「死亡者の急増」が主因
少子化が危機になるのは2030年代以降

 では、「これから」の人口減少の原因は何なのか。2030年代前半までは、戦前のベビーブーマーに「団塊世代」と呼ばれる戦後の第一次ベビーブーマーが加わることで、高齢の死亡者は増え続けます。したがってその時点までは、人口減少の主因はやはり「死亡者の急増」です。それ以降は、死亡者数はピークを越えて横ばいになりますが、それまでと同様に出生者数が減少し続けるため 、人口はさらに減っていきます。そこで初めて「少子化」が人口減少の「主因」となるわけです。

 繰り返しますが、そこまでは「少子化」は人口減少の「主因」ではありません。ですから、「これまで」と「これから少し先まで」の人口減少は、どうにも避けられないものなのです。人口政策を語るとき、忘れてはならないところです。

 戦前と戦後のベビーブームによる2つの「人口の塊」が、日本に急速な高齢化をもたらし、その必然的な結果としての死亡者の急増が、人口減少を引き起こしました。西欧諸国には、そうした「人口の塊」はありません。それが、日本が大幅な人口減少に見舞われる珍しい国である理由です。

 それでは、人口減少を引き起こす「高齢化」や「少子化」の背景を、さらに詳しく探ってみましょう。まず高齢化についてですが、世間で語られることには少なからぬ誤解があります。たとえば、高齢化の「主因」は少子化ではありません。主因は「長寿化」です。寿命が伸びて、個々人にとって65歳以上の人生の割合が増えているから、社会のなかで高齢者の割合が増えているのです。ですから、出生率が低下しなくても、高齢化は進行します。つまり、高齢化を止める手立てはないということです。