金融危機後もこれまでと
同じ経営戦略は通用しない!
1年先の経済状況は誰にもわからない――。
サブプライム問題の発生から1年余が過ぎた。この間に我々が得た数々の教訓のうち、誰もが異論を挟まない教訓があるとすれば、まさしくこの一言に尽きるのではないだろうか。
昨夏にサブプライム問題が深刻化した直後でさえ、「多少のインパクトはあるものの、これまでの延長で経済は推移し、回復する」と見られていた。ところが、秋には世界を激変させるような金融危機が発生し、年初には「世界的な景気後退」という、これまでとは全く異なる経済環境が出現していたのである。
あらゆる業界の企業が、大幅な減収減益に陥り、リストラに奔走し、最悪の場合は倒産を余儀なくされた。最近「景気底入れ」の期待が広まり始めたとはいえ、変わらずに続く不確実な経済環境のなか、企業は手探りを続けている。
こういう状況を目の当たりにして、「中期的な経営戦略を立てようとすること自体が無駄ではないか」と考えている企業関係者も多いだろう。激動の市場で企業が生き残るためには、不確実性を回避したり、軽減したりするための知恵が必要不可欠となる。
不確実性を予測し、回避するための方策はないものだろうか。
そこで本連載では、戦略立案のプロであるコンサルタント陣が、主要業界別のケーススタディを通じて、「どのように不確実性に取り組むべきか」についての考え方を、詳しくレクチャーして行く。連載第1回では、その基本的なコンセプトをお伝えしよう。
1つだけはっきり言えること――。それは、「大不況が起きる前と同じ経営感覚のままでは、もう勝ち残ることはできない」ということだ。
まず、現在のような「不確実性」が生じた経緯を振り返ってみよう。
金融危機の原因解明については、エコノミスト、大学教授など、高名な方々が多数の著作で論じている。詳しい分析は専門家に譲るとして、概略をまとめると次のようになる。