>>(上)より続く
これは、慰謝料を請求した後も同じことです。もし松本氏の言う通り、大介さんが智子さんに対して「男はこんなことを言っているけれど、本当はどうなんだ?」と問いただすことができれば何の問題もないのですが、智子さんがきっと激怒するでしょう。またそのせいで、智子さんが娘さん(夫婦間の子ども)に対して大介さんの悪口を吹き込み、父娘の関係に悪影響が及ぶようなことがあれば、踏んだり蹴ったりです。
このように大介さんは、松本氏から思いがけない反論を食らったせいで、ほとほと弱ってしまい、何も言い返せなかったようです。まるで(元)妻を人質にとられたような形ですが、何か打つ手はあるのでしょうか。松本氏は「なぜ自分だけ?」などと、なぜか被害妄想に走るような女々しい輩ですが、どうやって打ち負かせば良いのでしょうか。
妻から離婚の慰謝料をもらうも
その後不倫が発覚という難しさ
ここで、智子さんの責任の取り方を考えてみましょう。大介さんいわく、離婚の話を進める中で、当初智子さんは「私のわがままで離婚するんだから」と慰謝料の話を自ら切り出してきたそうです。具体的には「毎月1万円×11年間(子どもが成人するまで)=132万円」という条件でした。毎月1万円では大介さんの小遣いの足しにしかなりませんが、確かに智子さんはパートタイマーで年収は100万円前後、しかも離婚後は母子家庭になり、1人で娘さんを育てていくのだから、智子さんにとっては最大限の誠意だと言えるでしょう。
結局、大介さんは素直にその条件を受け入れたのですが、それは当時、まだ不倫相手の存在を認識しておらず、慰謝料の中身に「不倫の分」が含まれているとは知らなかったからです。
智子さんが本当に2人分(智子さん+松本氏)の慰謝料を大介さんに支払ったとしたら、この件はどうなるのでしょうか。確かに、大介さんが松本氏に対して追加で慰謝料を請求することは難しくなりますが、本当に智子さんは2人分の慰謝料を立て替えたと言えるのでしょうか。
前述の通り、結婚10~15年の夫婦が離婚する場合、法務省の司法統計によると、慰謝料は432万円が妥当な金額です。一方で、智子さんが離婚時に約束したのはわずか132万円です。よって、智子さんは自分の分としても不十分な金額しか支払っておらず(ただし、夫婦間でこれ以上の金額を請求しないことを約束しています)、もちろん松本氏の分を立て替えたことにはならないのです。