自分では「いい上司」であるかどうか、判断しづらいかもしれませんね。それがわかれば、どんなに安心できることか、と思う人も多いのではないでしょうか。

「上司」といえども、ひとりの「人間」ですから、どうしても「いつもいい人でありたい」という願望を持つのは、当然のことでしょう。そうであっても、部下を持つ立場になったら、自身に厳しく、相手にも厳しくせざるをえない状況に身を置くことになると覚悟しなければなりません。

 私が秘書として働いていた時、こんな質問をしたことがあります。

「はじめて部下を持った時、一番つらかったことは何でしたか?」

 多くの人が、「部下を評価しなければならないこと」と答えていました。なぜなら、「部下の評価」をする時こそ、いつもいい人でありたいという願望が満たされず、いい人の仮面を取らなければならない時だからです。それが、「上司」としての初めての関門であり、この時、上司としての「覚悟」が試されます。

 多くの場合、人事評価は、相対評価ですから、ある部員に「B」の評価をつけると、他の部員に「D」をつけなければなりません(ここでは、A:最高評価 からE:最低評価の5段階評価とします)。

 ところが、上司の中には、いい人の仮面をとることができない人がいます。

 たとえば、部下が10名いたとしましょう。すると、10名全員に、C(平均値)という評価を与えるのです。評価者の心理として、評価が中央に偏りがちという意味のCentral Tendency(中央傾向)が挙げられます。みんな仲良く同じ評価であれば、評価者は評価対象者からの不平不満や文句を避けることができるという心理が働くのです。

 今後、ますますグローバル化が加速するなか、「みんなで仲良く同じ評価」であれば安心と喜んではいられないのは、誰もが気づいていることではないでしょうか。

 いかがでしたでしょうか? 一見いい人に見える人が、「いい上司」とは限らないということをおわかりいただけましたか? 一見いい人に見えない人であっても、本当は、部下思いのいい上司かもしれません。見た目だけで判断せずに、じっくりと時間をかけて人とつきあっていく心の余裕を持ちたいですね。