どの職場でも蔓延している「好き嫌い」や「敵・味方」、そして「派閥」。この視点でしかものを見れない社員が増殖すると、組織は壊滅的なダメージを受けることもある。特に管理職以上は要注意だ。
本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。
連休等の休みを除けば、新年度が始まってから、実質1ヵ月以上が過ぎた。新しい部署に配属された人や新入社員も、そろそろ慣れてきた頃だろう。そして新しい環境に慣れてくると、それまで気づかなかった職場のさまざまな「人間模様」がわかってくる。そして、それにすでに巻き込まれてしまっている人もいるかもしれない。
これは極端な場合、社内、組織内の「派閥争い」を知るということだ。そこまで行かなくても、職場の中で実質的に権力のある人は誰か、求心力のある人は誰かについて知ることになる。
知るだけならばまだよいのだが、問題はそういった人間関係に巻き込まれて、望みもしない面倒を背負い込まなくてはならない状態になることだ。だが、大抵の場合、そういった派閥争いなどには関わりたくない人も、気が付くと渦中にいる、という状況になる。
1人の社員を巡って
評価が真二つに割れた
先日、中堅企業に勤めている友人から話を聞いた。彼自身は人事部の副部長だ。2年ほど前、まだ友人が副部長になったばかりの年、年度末の人事査定の際、ある社員の査定で問題が起こった。
その社員は来年、係長昇進の時期になる男性だった。したがって、その前年の評価は彼の将来にとって大切な意味を持つ。その評価は2人の上司と同僚が行うことになっていた。その中でも上司の評価のウエイトが高い。
人事部副部長である友人が、その社員の評価表を見たときはいささか驚いたという。その社員の評価は、直属の上司(係長クラス)は、7段階中「7」で最高だったのに対し、もう一人の評価者として選ばれた、となりの課の課長の評価は7段階中「2」だったのだ。大抵の場合、評価は「4」以上であることが多く、相当問題がない限り「2」にはならない。過去に評価「2」の社員はいたが、ほとんどの場合一致して評価者のスコアは低く、誰が見ても頷くくらい、パフォーマンスが悪かった。
このように、片方の評価が極端に高く、片方の評価が極端に低いのは稀なケースだ。低い評価をした隣の課の課長も、その社員と仕事をしていた。もとよりその社員の課と評価者がいる隣の課は、常に連携して仕事をしているため、その社員の仕事ぶりについて、直属の係長も隣の課の課長もよくわかっている。2人の評価者が1人の社員について、同じように仕事を見ていても、評価は真二つに分かれていたのである。